1世帯の転入がもたらす、収入と支出
夫婦+子ども2人の「標準世帯」(世帯課税所得500万円・持ち家率60%)を例にすると、両側はこうなります。
前提を動かしてみてください
結論はコスト側の見方で反転します。それこそがこのテーマの本質なので、隠さずスライダーにしました。
参考値は「子ども1人あたり市費15万円(空き定員の限界費用)」で再計算したもの。三郷市は交付団体のため、税収増の約75%は普通交付税の減で相殺され、逆に人口増による需要増も交付税で措置されます。名目の収支差は制度上、実際にはこれより圧縮されます(詳細は出典参照)。
平均費用で見るか、限界費用で見るか
このシミュレーターの結論を分けるのは、たった1つの前提——「子ども1人の行政コスト」の見方です。
平均費用(約59万円/人年)で見ると、子育て世帯の転入は「赤字」に見える
教育費62.4億円を児童生徒10,597人で割ると約59万円。この単価で計算すると、標準世帯の税収41.5万円では足りず、転入は財政的にマイナスに見えます。 しかしこの59万円には、子どもが増えても増えない固定費(校舎・給食センター・既にいる教職員)が含まれています。
いまの三郷は、児童生徒がピーク比42%減——「空き」がある
学校に空き定員がある地域では、子どもが1人増えても校舎も先生(県費・学級数連動)もほぼ増えません。実際に増えるのは教材・給食などの限界費用=年10〜20万円程度。 この見方なら標準世帯の転入は黒字です。つまり「42%減で空いた教室」は、負の遺産ではなく、転入を受け入れるための資産だと捉え直せます。
ただし市内は偏在しています。1,400人超の大規模校区にさらに呼び込めば増築(=高い限界費用)が必要になり、小規模校区なら受入余力が大きい。 「どこに呼び込むか」こそが政策であり、学校統廃合シミュレーション → と表裏一体の議論です。
反対意見にも、向き合う
この提案には、もっともな反対意見があります。都合のよい数字だけを並べないために、いちばん強い形の反対論と、それに対するいまの考えを併記します。
反対意見「税収より行政コストの方が大きい。子育て世帯の誘致は財政的にはただの赤字事業だ」
平均費用で見ればその通りで、このページでもデフォルトの計算は赤字で表示しています。ただし空き定員がある間の限界費用で見れば黒字になり、どちらが実態に近いかは受け入れる地域の状況次第です。
そして財政収支だけがすべてではありません。地域の担い手・学校や商店の存続・まちの活力という、数字にならないリターンがあります。このページはあくまで「財政の面」を切り出した試算です。
反対意見「近隣市との人の奪い合いで、社会全体ではゼロサムだ。税金で誘致合戦をするのは不毛だ」
国全体で見ればゼロサムという指摘は正しく、だからこそ私は「補助金で釣る誘致合戦」には慎重です。
目指すべきは、教育・子育て環境や住みやすさというまちの実力そのもので選ばれることです。それは転入者のためだけでなく、いま住んでいる市民の生活の質をそのまま上げる投資でもあります。
反対意見「大規模な住宅開発は、将来の学校増築やインフラ負担を生む。市内には1,400人超の学校さえある」
重要な指摘です。実際、市内最大の小学校は1,450人で、こうした地区への追加流入は増築という高い限界費用を伴います。
だからこの試算は「どこでも呼び込めば得」とは言っていません。空き定員のある学区へ誘導する立地政策とセットで初めて、財政的にも成立します。