まず、誰が走らせているのか
市内を走るバスには、性格の違う2種類があります。ここを分けないと、話が噛み合いません。
| 路線バス | コミュニティバス | |
|---|---|---|
| 誰が運行するか | 民間のバス会社 | 市が事業者に委託 |
| 誰が決めるか | 会社が、事業として判断 | 市が決める |
| お金の出どころ | 基本は運賃収入 | 市の予算(年間約5,000万円) |
| 減便・廃止 | 会社の判断で起こりうる | 市の判断 |
つまり路線バスは、市の事業ではありません。民間の会社が、採算を見ながら走らせています。だから市が「増やしてください」と言っても、それだけでは増えません。
令和元年12月に廃止された彦成地区の路線は、翌年1月からコミュニティバスに切り替えて維持しました。民間が降りた路線を、市が引き取って走らせている——それが年間5,000万円の中身です。
「赤字路線」とは、何のことか
言葉のとおり、その路線を走らせるのにかかるお金より、運賃収入が少ない状態です。ただ、中身を分けて見ると分かりやすくなります。
- 運転士の人件費——最も大きい
- 燃料費
- 車両の購入・整備・車検
- バス停・案内の維持
- 保険、安全対策の費用
- 運賃収入だけ
- (=乗った人数 × 運賃)
赤字が続くと、会社は順に手を打ちます。①便を減らす → ②区間を短くする → ③路線をやめる。減便は、いきなり廃止するより前の段階の判断です。
本数が減る → 待ち時間が読めない → 車やタクシーに切り替える → 運賃収入がもっと減る → また減便。
——この循環に入ると、元に戻すのが難しくなります。
いちばんの原因は、乗る人が少ないこと
市の計画には、原因が3つ挙げられています。順番に見ると、どれも「乗る人の数」に行き着きます。
1世帯あたりの自動車保有台数は約0.79台。——多くの人が、そもそもバスを使っていません。
ここが難しいところです。「バスを増やしてほしい」と答える人と、実際に毎日バスに乗る人は、同じではありません。市の計画も、1便あたりの利用者数の目標を「増やす」ではなく「22人を維持する」と置いています。人口が減るなかで維持することすら簡単ではない、という見立てです。
三郷市は、川に挟まれています
この地形が、バスのルート設計を難しくしています。東西は5.6km、南北は9.5km。細長い形です。しかも三方を川に囲まれ、東京・千葉・八潮へは橋を渡ります。
つまり「本数を増やす」だけでは解けません。川で分断された細長い市域を、限られた橋と道路でつなぐ——そもそもルートの引き方に、地形の制約がかかっています。
どこが、困っているのか
市は2つの言葉を使い分けています。まったくバスがない地域と、あるけれど少ない地域です。
| 区分 | 定義 | 三郷市では |
|---|---|---|
| 公共交通 空白地域 | 鉄道駅から1km圏外、かつバス停から300m圏外 | 上口1〜2丁目、番匠免1〜3丁目、栄4〜5丁目・鷹野2丁目など |
| 公共交通 不便地域 | バス停から300m圏内だが、片側の運行本数が1日30本未満 | 本数の少ない区間・時間帯が各所にある |
——数のうえでは、ほとんどの市民が「圏内」にいます。それでも不便だという声が出るのは、本数と時間帯が足りていないからです。
だから「バス停を増やす」では解決しません。問題は停留所の数ではなく、そこに来る便の数のほうにあります。そしてその便の数は、乗る人の数で決まります。
市は、何をしようとしているか
令和8年度から10年間の計画に、数値目標が置かれています。
| 指標 | 現況 (令和6年度) | 中間 (令和12年度) | 目標 (令和17年度) |
|---|---|---|---|
| 路線バス1便あたりの利用者数 幹線公共交通軸 | 22人 | 22人 | 22人 |
| コミュニティバスの年間利用者数 | 98,671人 | 103,000人 | 108,000人 |
| コミバス利用者1人あたりの公費 | 520円 | 500円 | 470円 |
| 新たな移動手段の導入検討会議 | — | 1地区 | 2地区 |
注目したいのは1便あたり22人を「維持する」という置き方です。計画にはその理由も書かれています——「今後、人口減少が見込まれており、現在の利用者数の維持は困難になることが予想される」。増やす目標ではなく、減らさないための目標です。
もうひとつは1人あたりの公費を520円から470円に下げるという目標。これは利用者を増やすか、料金を見直すかのどちらかでしか達成できません。「お金をかければ解決する」という話ではないことが、ここに表れています。
運転手の確保を支援する——事業①-3として明記
新しい手段を検討する——デマンド交通、自家用有償運送、日本版ライドシェア、AIデマンド交通など
使いやすくする——交通系ICカードなどのキャッシュレス決済、情報のオープンデータ化
令和8年3月に廃止された新三郷駅西口〜吉川駅南口の路線は、三郷市と吉川市が協力し、令和8年4月からコミュニティバスの実証運行に切り替わりました。市境をまたぐ路線を、2つの市で支える——地形の制約に対する、ひとつの答え方だと思います。
私が、大事だと思っていること
「バスを増やしてほしい」という声は、切実なものです。免許を返したあと、通院に行けなくなる。その不安は、数字の話ではありません。
同時に、増やせば解決する問題ではないことも、数字を見ると分かります。1便あたり22人を維持することすら難しく、コミュニティバスには1人乗るごとに520円の公費が入っています。ここを見たうえで「どう残すか」まで言うのが、議員の仕事だと考えています。