職務の中で犯罪を知ったとき、
公務員には告発する義務があります。
これは努力目標ではなく、法律に書かれた義務です。
ただし、義務だけを知って動くと、動いた人が守られないことがあります。
義務の条文と、守りの条文を、両方並べます。
まず、義務のほう
2 官吏又は公吏は、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは、告発をしなければならない。
第1項は「できる」。第2項は「しなければならない」。 書き分けられています。官吏=国の公務員、公吏=地方の公務員です。三郷市の職員も、ここに含まれます。
この条文の性質について、政府は次のように答えています。
では、果たさなかったときはどうなるか。この条文自体に罰則はありません。 告発しなかったことを処罰する規定は、置かれていません。
ただし、それで終わりではありません。
地方公務員の場合の根拠は地方公務員法第29条第1項です。 同項は「職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合」などを懲戒事由とし、 処分として戒告・減給・停職・免職を定めています。
答弁の言い回しは「各号のいずれかに該当するときは…対象となり得る」です。 告発しなかったことが、そのまま自動的に処分になるわけではありません。
そして「正当な理由なく」という限定が、必ず付いています。 何が正当な理由にあたるかは、答弁では示されていません。
同時に、守秘義務もあります
告発の義務と、秘密を守る義務。この二つは、同じ人にかかっています。 職務の中で知ったことを外に出す場面で、両方が同時に働きます。
どちらが優先するかを一律に定めた条文は、私が調べた範囲では見当たりませんでした。 だからこそ、次に書く「守りの制度」を先に知っておくことに意味があります。
通報した人を守る制度
公益通報者保護法(平成16年法律第122号)です。
この法律が守るのは、「不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく」行われた通報です(第2条第1項)。 目的が問われる、ということです。
通報先は3つあります。どこに出すかで、必要なものが変わります。
必要なのは「通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する」こと。 いちばん軽い要件です。
「信ずるに足りる相当の理由」があるか、または思料したうえで所定の事項を書いた書面を出すことが要ります。
要件はいちばん重くなります。
守られる内容は、解雇の無効(第3条)、不利益な取扱いの禁止、そして損害賠償を請求されないこと(第7条)です。
地方公務員については、専用の条文が置かれています。
この場合において、…事業者は、…公益通報をしたことを理由として一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう、 これらの法律の規定を適用しなければならない。
義務の範囲と、守りの範囲は、
ぴったり重なっていません。
ここが、このページでいちばんお伝えしたいところです。
職務を行うことにより、犯罪があると思料したとき。
同法の別表に掲げられた法律の、罰則付き規定への違反など。
「犯罪」のほうが広い。 つまり、刑事訴訟法にしたがって告発した公務員が、必ず公益通報者保護法の保護対象になるとは限りません。
義務を果たしたのに守りが届かない、という場面がありうる。 これは誰かの落ち度ではなく、目的の違う二つの法律が、別々に作られた結果です。
知ってしまったことが「通報対象事実」にあたるのか。どこに出せば保護されるのか。 ここは条文を読むだけでは判断しきれない領域です。
消費者庁の公益通報者保護制度相談ダイヤル、または弁護士にご相談ください。 相談した事実そのものが不利益に扱われることは、法が禁じています。
令和8年12月1日から、
守りが強くなります
改正公益通報者保護法が令和7年6月11日に公布され、令和8年12月1日に施行されます。
消費者庁は「国及び地方公共団体向けガイドライン」を、同じ令和8年12月1日施行で用意しています。 三郷市も、この対象です。
なお同法第11条は、事業者に対し、通報に対応する業務の従事者を定めること、 通報に適切に対応するために必要な体制の整備を求めています。
市の公式サイトで職員向けの公益通報窓口の案内を探しましたが、2026年8月25日時点では見つけられませんでした。
これは「窓口がない」という意味ではありません。私が確認できなかった、というだけです。 庁内の規程として整備されている可能性があります。ここは市に確認すべきことだと考えています。
なぜ、これを書いたか
議会で行政の内部について問うことがあります。そのとき私が使えるのは、公表された資料と、答弁です。 中で何が起きているかを、私が直接見ることはできません。
一方で、法律は、職務の中で犯罪を知った公務員に告発を義務づけています。 制度は、外からの追及ではなく、中にいる人の手で正されることを想定して作られているということだと、私は受け止めています。
ただ、義務だけを知らせるのは不誠実だと考えました。 動いた人が守られなければ、その義務は人を危険に晒すだけになります。 だから、守りの制度と、その隙間まで書きました。
このページは、特定の出来事について書いたものではありません。 三郷市に不正があるという主張でもありません。 私はそのような事実を確認していませんし、確認していないことを書くつもりもありません。
条文がそうなっている、ということだけをお伝えしています。
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