「アクセシビリティ」を、捉え直す
問われているのは、サイトの見た目ではない
「行政Webのアクセシビリティを上げるべきか」と聞かれれば、答えはイエスです。ただ、ここで言うアクセシビリティを「公式サイトのデザインや使い勝手」だけの話にしてしまうと、本質を外します。私が大切だと考えるのは、もっとシンプルなこと——必要としている人に、必要な情報が、早く届くかどうか。サイトは、そのための手段の一つにすぎません。
国の指針に、どこまで沿えるか
国は、手本を自ら示している
「見た目や技術基準だけが答えではない」と書きました。ただ、それは国が示す基準を軽視していい、という意味ではありません。むしろ逆です。
デジタル庁は、自らのサイトについてアクセシビリティ・ステートメントを公開し、「JIS X 8341-3:2016 の適合レベルAA」(加えて国際指針 WCAG 2.2 の一部)を令和9年(2027年)3月末までに達成すると宣言しています。国が、自ら手本を示しているのです。さらに総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」でも、公的機関のサイトには同じ適合レベルAAが目標とされてきました。公的サイトが満たすべき物差しは、すでにはっきりしています。
問われるのは、自治体がどこまで遵守できるか
物差しがある一方で、本当の課題は地方自治体が、それに実際どこまで遵守できるかです。限られた人員と予算、そして前に述べた三層分離の制約の中で、現場が基準を満たしきるのは、決して簡単ではありません。理想と現実の差——ここにこそ、地方の宿題があると考えています。
「準拠できるか」は、財政の話でもある
三郷市の独自の工夫や路線も、一定は大切だと考えています。その上で——国が示す指針に足並みをそろえられれば、補助金や交付金を受けやすくなる。それは、限られた三郷市の財政を、より効果的に使えることに直結します。
つまり、国の物差しに「どれだけ乗れるか」は、きれいごとの理想論ではなく、お金の使い方の戦略です。アクセシビリティ対応を、単なるコストではなく、財政を活かす投資の判断として捉える——私は、そう考えています。
行政サイトで最も大切なのは、スピード
民間サイトとは、価値の置き所が違う
民間のサイトは、長く滞在してもらうこと・回遊してもらうことに価値があります。しかし行政のサイトは違います。災害の情報、制度の変更、申請の締切——「正確な情報を、いかに速く出せるか」が最大の価値であり、最大のアクセシビリティです。どれだけ見た目を整えても、肝心の情報が遅ければ意味がありません。まず問うべきは、速く出せているか、だと考えています。
民間と同じようには、いかない
下層ページは、担当課が更新している
民間サイトの多くは、専門チームが一括で管理・更新します。一方で行政のサイトは、細かい下層ページを、各担当課が自分たちで更新していることが少なくありません。だから「全面リニューアルして綺麗にする」だけでは回らない。日々の更新を担うのは、Webの専門家ではなく、通常業務を抱えた職員だからです。ここは民間と大きく違う前提です。
ベンダーのシステムには、一定の使いやすさがある
専門の事業者(ベンダー)が作ったシステムには、誰が担当しても一定の品質で更新できる、という強みがあります。安定して回ること自体に価値がある。既にあるものを、闇雲に否定するべきではないと私は考えています。
AI活用(バイブコーディング)の、光と影
予算削減には、確かに効く
私自身、AIと対話しながら開発を進める「バイブコーディング」を日常的に使っています(このサイトも、その方法で作っています)。うまく使えば、外注コストを大きく下げられる——ここは間違いありません。行政の予算削減という点で、可能性は本物です。
でも、行政で内製化するには「属人化」の壁がある
問題は、続けられるかどうかです。バイブコーディングは、使いこなせる専門人材に依存します。その担当者が異動・退職したら、仕組みは止まってしまう。「あの人しか分からない」状態は、行政では特に危険です。だからこそ、職員がバイブコーディングで広報を自動化し続ける、という絵は、現実にはとても難しいと私は感じています。「AIで内製化すれば全部解決」とは、安易に言えません。
構造そのものの壁——「三層分離」とゼロトラスト
行政のネットワークは、3つに分けられている
2015年の年金情報の大規模流出をきっかけに、自治体の情報システムは①マイナンバー系 ②庁内の業務系(LGWAN)③インターネット系の3つに分離することが、国から求められています。これが「三層分離」です。市民の大切な個人情報を守るための、重要な仕組みです。
一方でこの厳格な分離は、情報を外(Web)へ出すスピードや、庁内での自動化を構造的に難しくしている面もあります。前の章の「広報の自動化が難しい」の背景には、組織の事情だけでなく、この壁もあります。速さと安全の、トレードオフです。
その先にある考え方が、「ゼロトラスト」
近年は、境界でまとめて守る三層分離から、「何も無条件には信頼せず、アクセスのたびに本人と端末を検証する」ゼロトラストの考え方へ——という議論が、国レベルでも進んでいます。守りを"境界"から"一つひとつのアクセス"へ移すことで、セキュリティを保ったまま、情報の流れをもっと速く・柔軟にできる可能性があります。
情報のスピード改善は、この土台の見直しと一体だと私は考えています。(この考え方は ゼロトラスト行政 のページで詳しく書いています。)
もう一つの道は、「メディアと組む」
行政は一次情報を出す。届けるのは、届け方に強い人に。
書く情報=コンテンツについては、民間メディアとの連携を強めるのが有効だと考えています。行政は、正確な一次情報を瞬時に出す。そして「誰に、どう届けるか」は、その分野で読者を持つメディアの力を借りる。役割を分ける、という発想です。
子育ての情報は、子育て世帯が日頃見ている子育てメディアと。
先輩世代向けの情報は、その世代が読んでいる媒体と。
届けたい相手が、すでに集まっている場所へ情報を運ぶ——そういうメディアパートナーをつくることで、市内全体に情報が行き渡る状態に近づけます。
行政が、全部を抱えない
「速さ」は内部改善で、「届け方」は連携で
情報を速く出せるようにすること——三層分離の見直しやゼロトラストへの移行といった、土台の改善を含めて——は、行政内部の取り組みで進める。それをどう広く届けるかは、メディアとの連携で担う。この役割分担なら、公式サイトを一気に大改修しなくても、無理なくアクセシビリティを上げられます。全部を行政だけで抱え込まないこと——それが、続く仕組みをつくるコツだと考えています。
私が、考えていきたいこと
メディアパートナーで、市全体の「届く」を上げる
私は、メディアパートナーをつくることによる、市内全体のアクセシビリティ向上を考えていきたい。そして、その土台となる情報のスピードの改善は、行政内部の取り組みとして進める。
公式サイトを磨くこと自体を否定するわけではありません。ただ、限られた予算と人手の中で、「情報が本当に届く」をどう最大化するか——私は、ここに答えがあると考えています。
本ページは鈴木優作個人の考えの整理であり、市・議会・会派の公式見解ではありません。ご意見・ご指摘をお待ちしています。