Dual Representative System · Local Government
市長も、市議会議員も、選んでいるのはあなたです
総理大臣は、選べない。
市長は、選べる。
国で私たちが投票して選ぶのは、国会議員だけです。総理大臣は、その国会議員が指名します。でも市は違います。市長も、市議会議員も、市民が直接選ぶ——ふたつの代表が、どちらも民意を背負って向き合う。これが「二元代表制」です。
2つの代表
市長と議会。どちらも住民が直接選ぶ
24
三郷市議会の定数(市長は1人)
93
直接選挙を定める憲法の条文

二元代表制って、なに?

「議会は市長の応援団じゃないの?」「反対ばかりするのは、足を引っ張っているのでは?」——もしそう見えるとしたら、それは制度の設計が伝わっていないからだと思います。ふたつの代表を、あえて向き合わせる。それが、この国が地方に選んだ仕組みです。条文をもとに、できるだけやさしく整理します。

In One Line

まず、これだけ

二元代表制とは
市民が「市長」と「市議会議員」を、
別々の選挙で、それぞれ直接選ぶしくみ。

「二元」は、代表がふたつあるという意味です。ひとつは市長。もうひとつは議会(三郷市では24人の議員)。どちらも、同じ市民が選んでいます。どちらか一方が上、ということはありません。

日本国憲法 第93条
地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する

憲法が、わざわざ「直接これを選挙する」と書いています。市長を市民が直接選ぶことは、法律でも変えられない前提だということです。

National vs Local

国とくらべると、一発でわかる

同じ「選挙で選ばれた政治」でも、国と市では代表の生まれ方がまったく違います。ここが分かれば、二元代表制はほぼ分かったと言っていいと思います。

国 ── 議院内閣制
総理大臣は、
国民が直接選べない
国 民
↓ 選挙で選ぶ
国会議員衆議院・参議院
↓ 国会が指名する
内閣総理大臣
総理大臣は、国会の中から生まれます。だから内閣を支える与党と、それに対する野党という構図ができます。
市 ── 二元代表制
市長も議会も、
市民が直接選ぶ
市 民
↓ それぞれ別の選挙で、直接選ぶ
市 長1人
市議会三郷市は24人
市長は、議会の中から生まれません。だから地方議会に、本来「与党・野党」はありません。どちらも市民から直接、力を預かっています。

市長を選んだのも市民。議員を選んだのも市民です。どちらも「民意」を背負っています。だから議会が市長に厳しく問うことは、市長の民意を否定することではなく、もうひとつの民意を届けることになります。

Why Two

なぜ、わざわざ2つに分けるのか

効率だけを考えれば、決める人と実行する人は同じほうが速い。それでも分けているのには、理由があります。

1
力を、一人に集めない
市の予算は年に600億円を超えます。それを決める権限も、使う権限も、職員を動かす権限も同じ人が持ったら、間違いを止める人がいなくなります。決める人と使う人を分けるのが出発点です。
2
役割を、はっきり分ける
市長は実行する人(執行機関)。議会は決めて、確かめる人(議事機関)。市長が予算案をつくり、議会が認めるかどうかを決める。順番と役割が決まっています。
3
緊張関係を、あえてつくる
仲が良いことが目的の制度ではありません。互いに独立しているから、問える。議会が市長の応援団になった瞬間、市民には確かめる手段がなくなります。
Who Can Do What

市長と議会は、それぞれ何ができるのか

「議会って結局なにしてるの?」に答えるには、権限を並べるのが一番早いです。

できること市長(執行機関)市議会(議事機関)
予算つくって、議会に提案する認める・修正する・否決する(自治法96条1項2号)
条例提案する制定・改廃する(同1号)。議員からも提案できる
決算調製して、認定を求める認定する/しない(同3号)
市役所の職員指揮監督する指揮できない。職員に命令する立場ではない
事務の調査執行する調査できる。関係人の出頭・証言・記録の提出を求められる(同100条)
相手への対抗手段議決を再議に付す(176条)/議会を解散する(178条1項)市長の不信任を議決する(178条)
地方自治法 第96条第1項(抜粋)
普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。
一 条例を設け又は改廃すること
二 予算を定めること
三 決算を認定すること
(四号以下、契約の締結や財産の処分など、全15号)

つまり市長は、議会が「うん」と言わなければ予算を1円も使えません。議会が予算を否決すれば、市長の公約もそのままでは実現しません。それだけ重い権限を、市民から預かっているということです。

地方自治法 第100条第1項(抜粋・百条調査権)
普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(…)に関する調査を行うことができる。この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる
When They Clash

ぶつかったら、どうなるのか

ふたつの代表が正面から対立したとき、制度は「どちらが正しいか」を決めません。もう一度、市民に聞くという答えを用意しています。

STEP 1
議会が「市長を信任しない」と議決する
不信任の議決。議長がただちに市長へ通知します。議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要——普通の議案よりはるかに重い要件です。
STEP 2 ── A
市長が議会を解散する
通知を受けた日から10日以内なら、市長は議会を解散できます。議員は全員、身分を失います。「では、市民に選び直してもらおう」ということです。
STEP 2 ── B
10日以内に解散しなければ、市長が失職する
解散しないままその期間が過ぎると、市長はその日に職を失います
STEP 3
選挙のあと、新しい議会がもう一度突きつけたら
解散後はじめて招集された議会で再び不信任が議決されれば、市長は職を失います。このときの要件は「3分の2以上が出席し、その過半数」——1回目より軽くなります。市民が選び直した議会の判断のほうが重い、という設計です。
三郷市に当てはめると(議員数24人・欠員なしの場合)
16人以上が出席(24人の3分の2)——ここが入口。
18人の同意が必要(24人全員が出席したときの4分の3)=1回目の不信任。
13人の同意で足りる(24人出席時の過半数)=解散後の2回目。
地方自治法 第178条(不信任の議決と解散)
普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を…長に通知しなければならない。この場合においては、…長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる
2 …前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり…たときは、…長は、…その職を失う
3 前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。

この仕組みは、ほとんど使われません。使われないことに意味があります。「最後はこうなる」と互いに知っているから、その手前で話し合う。抜かない刀のようなものです。

Veto · Reconsideration

市長には「もう一度考えて」と言う権利がある

議会が決めたことに市長が納得できないとき、そのまま飲むしかないわけではありません。再議——いわゆる拒否権です。

地方自治法 第176条(再議)
普通地方公共団体の議会の議決について異議があるときは、…長は、…その議決の日(条例の制定若しくは改廃又は予算に関する議決については、その送付を受けた日)から十日以内に理由を示してこれを再議に付することができる
2 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する。
3 前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。
ここが効いてくる(24人全員が出席したとして)
13人で可決できる(過半数)——ふだんの議決。
16人が必要になる(出席議員の3分の2)——市長が再議に付したあとの条例・予算。

同じ内容でも、市長が「もう一度」と言えば、通すためのハードルが上がります。市長ひとりの意思が、議会13人分より重くなる場面があるということです。ここにも、力の均衡が設計されています。

Emergency Power

議会を通さずに決められる場面もある

専決処分といいます。災害など、議会を開く時間がないときのための仕組みです。ただし、ここには注意すべき点があります。

地方自治法 第179条(専決処分)
普通地方公共団体の議会が成立しないとき、…特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、又は議会において議決すべき事件を議決しないときは、当該普通地方公共団体の長は、その議決すべき事件を処分することができる。
3 前二項の規定による処置については、…長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない
4 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、…長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。

大事なのは4項です。あとから議会が「認めない」と否決しても、すでに行われた処分そのものが自動的に取り消されるわけではありません。市長は「必要と認める措置」を講じて報告する、と書かれているだけです。

だからこそ
この条文には「議会において議決すべき事件を議決しないとき」も入っています。つまり議会が動かないと、市長が単独で決められる道が開いてしまうということです。議会が期限内に結論を出すこと自体が、二元代表制を保つ条件になっています。
Common Misunderstandings

よくある、3つの誤解

✕ 議員は、市長の応援団だ
○ どちらも市民に選ばれた、対等な代表
市長は議会から生まれないので、支える義務もありません。国会のような与党・野党は、地方には本来ありません。応援団になってしまうと、市民が市政を確かめる手段が消えます。
✕ 市長に反対するのは、足を引っ張ること
○ 確かめるのが、議会の仕事
賛成も反対も、理由を示して判断するのが議決です。反対そのものが目的化するのは違いますが、問わないことは、仕事をしていないのと同じです。
✕ 議会は、出てきた案を通すところ
○ 修正も否決もできるし、自分たちで条例もつくれる
予算は修正も否決もできます(96条1項2号)。条例は議員からも提案できます。「通すだけの場所」だとしたら、それは制度ではなく運用の問題です。
In Misato

三郷市に当てはめると

市長 ── 1人
任期4年。市の予算案をつくり、職員を指揮し、決めたことを実行します。2026年11月1日に、20年ぶりの市長選挙が行われます。
市議会 ── 24人
任期4年(2025年8月11日〜2029年8月10日)。予算・条例・決算を議決し、市の事務を調査します。私はこの24分の1です。

国・県・市・自治会・個人という役割の分かれ方については 誰が、どこまで担うのか に整理しています。議会そのものが法律で「議事機関」と定義されたのは実は最近(2023年の地方自治法改正)だという話は 地方議会が"定義"されたのは、実は最近 にまとめました。

My Position

私が、この制度をどう使うか

私は市議会議員なので、市長をチェックする側です。だから2026年の市長選挙で、どの候補も応援しません。今から誰かの応援に回れば、その人が市長になったあと、チェックが甘くなるからです。それは、私に票を託してくださった方への裏切りだと思っています。

その代わりにできるのは、皆さんが自分で判断するための材料を、平等に並べることです。二元代表制は、市民が二度選ぶ制度です。市長を選ぶときも、議員を選ぶときも、どちらも同じだけ重い一票です。

市長選挙を、争点で見る
立候補を表明した方の政策を、AI要約と原文の両方で。私の評価は加えていません。
議員の職責とは何か
チェック機能とは具体的に何をすることなのか。個別の困りごととの線引きも。
任期1年の市政報告
この1年、実際に何を問い、何が動いたか。除名審決についても書いています。
FAQ

よくある質問

二元代表制とは何ですか?

住民が、首長(市長・町長・知事など)と議会の議員を、それぞれ別の選挙で直接選ぶ仕組みのことです。日本国憲法第93条第2項が「地方公共団体の長、その議会の議員…は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と定めています。ふたつの代表がどちらも住民から直接選ばれ、対等な立場で向き合うため「二元」と呼ばれます。

二元代表制と議院内閣制は、何が違いますか?

国の議院内閣制では、国民が直接選ぶのは国会議員だけで、内閣総理大臣は国会が指名します。つまり総理大臣は国会から生まれます。一方、地方の二元代表制では、市長は議会から生まれず、市民が直接選びます。この違いから、国では与党・野党という構図ができるのに対し、地方議会には本来その区別がありません。

地方議会に与党・野党はありますか?

制度上はありません。市長は議会の多数派から選ばれるわけではないため、議会が市長を支える義務も、支えないことを理由に責められる立場もありません。議員は会派を組むことがありますが、それは国会の与野党とは意味が異なります。議会が市長の応援団になってしまうと、市民が市政を確かめる手段が失われます。

市議会は、市長を辞めさせることができますか?

できます。地方自治法第178条の不信任議決です。ただし要件は重く、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要です(三郷市の議員数24人・欠員なしなら、16人以上の出席と、全員出席時で18人の同意)。不信任が議決されると、市長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できます。解散しなければその日に失職し、解散して行われた選挙後の議会で再び不信任が議決された場合も失職します(このときは出席者の過半数で足ります)。

市長は、議会が決めたことを拒否できますか?

「再議」という制度があります(地方自治法第176条)。議会の議決に異議があるとき、市長は10日以内に理由を示して、もう一度審議するよう求めることができます。再議に付された条例・予算を可決するには、出席議員の3分の2以上の同意が必要になります。通常は過半数(24人出席なら13人)で可決できるものが、再議後は16人必要になる計算です。

議会を通さずに市長が決められることはありますか?

専決処分があります(地方自治法第179条)。議会が成立しないとき、緊急で議会を招集する時間的余裕がないことが明らかなとき、また議会が議決すべき事件を議決しないときに、市長が処分できます。市長は次の会議で議会に報告して承認を求めなければなりませんが、条例・予算について承認を求める議案が否決されても、必要と認める措置を講じて報告することが定められているだけで、処分そのものが自動的に取り消されるわけではありません。

本ページは「鈴木優作調べ」です。日本国憲法・地方自治法の条文をもとに個人でまとめた解説であり、市・議会・会派の公式見解ではありません。正確な内容は、必ず法令の原文や公式情報をご確認ください。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
二度選ぶ。それが、この制度に託されたことです。