やめる基準。
何を手放すかを、どう決めるか。
削る話をすると、必ず聞かれます。「誰が決めるのか」と。だから先に、決め方の話をします。基準がない状態では、いちばん声の小さい人の分から消えます。
いま、実際には何が「やめる」を決めているか
明文の基準がない自治体では、次の3つが事実上の決定装置になっています。どれも、市民から見えません。
- 予算査定秋の編成作業のなかで、財政部門と各課のやりとりで金額が決まる。議会に議案が出るのは3月。市民が見た時点では、もう終わっています。
- 担当者の交代事業を立ち上げた人がいなくなると、続ける理由も一緒に消える。逆に、理由が消えても事業だけ残ることもある
- 前年踏襲誰も「やめる」と言わなければ続く。やめるには誰かが説明責任を負うが、続けるには誰も負わない——この非対称が本体です
つまり、いま起きているのは「決めていない」のではなく、見えないところで決まっているということです。
使える道具は、すでにある
新しい制度をつくらなくても、既存の計画と手続で「やめる」は設計できます。
- 総合計画市の最上位計画。2011年の地方自治法改正で基本構想の策定義務はなくなり、いまは各自治体が条例などで位置づけている。ここに載っていない事業は、何を根拠に続いているのかを説明できるはず
- 公共施設等総合管理計画・個別施設計画建物とインフラを、将来の更新費用から逆算して考える計画。総量を減らす議論の土台はここ
- 行政評価(事務事業評価)事業ごとに目的・指標・コストを並べて点検する仕組み。やるだけで終わると、書類が増えるだけになる
- 受益者負担の考え方使う人が負担するのか、税で広く負担するのか。手数料・使用料の見直しの基準になる
- サンセット条項要綱や条例に終期を書いておく。続けるなら、そのつど理由を書き直す
三郷市におけるこれらの計画の版・期間・記載内容は、本ページでは未確認です。引用するときは原本にあたります。
基準にすべき5つの問い
「必要か/不要か」で切ると必ずもめます。分解すると議論できます。
この5つで×がついたら即やめる、ではありません。×がついた項目について、続ける理由を書けるかどうか——そこが分かれ目です。
基準は、会議室だけでつくらない
誰が決めるのか、という問いへの答えです。決めるのは最終的に議会ですが、基準そのものは市民と一緒につくるべきだと考えています。
よくある型と、その限界
- パブリックコメント案が固まってから出るので、直る余地が小さい。件数も伸びにくい
- 審議会・委員会専門性は担保されるが、委員の選び方で結論が決まる面がある
- アンケート聞き方で答えが変わる。抽出方法が人数より効く
足したい型
- 案が固まる前に出す秋の査定より前に、材料と論点を公開する
- 無作為抽出で人を集める手を挙げた人だけにならないようにする
- 過程を公開する案・意見・どう直したか(または直さなかった理由)まで出す
意見を聞いた証拠ではなく、意見で何が変わったかを見せる。それがないと、参加した人がもう二度と来なくなります。
やめると決まってから、実際に要る手続
「決めた」と「終わった」の間には、これだけあります。ここを飛ばすと、混乱だけが残ります。
- 根拠を直す条例なら改正または廃止(議会の議決)。規則・要綱なら市の手続。根拠が残ったまま予算だけ落とすと、制度はあるのにお金がない状態になる
- 経過措置を置くいま使っている人の扱いを決める。既得の権利をどう扱うかは、法的にも詰めが要る
- 周知期間をとる広報・web・窓口・関係団体。知らなかった人が損をする終わり方にしない
- 代わりの案内をつくる国・県の制度、統合先、相談窓口。つなぐところまでを市の責任にする
- やめた理由を残す次に同じ議論が起きたとき、ゼロから始めないために
やめる話をするなら、順番がある
市民のサービスを削る話を先に出すのは、順番が違うと考えています。先に見られる側に立つ。
1を飛ばして3から入ると、それは「削減」ではなく「押しつけ」になります。
あわせて読む
・補助金は、どう決まり、どう出ているのか — やめ方がいちばん問われる領域
・市にできること、できないこと — そもそも市が決められる範囲
・三郷市の財政を家計に置きかえる — なぜこの話が要るのか
・事前監査のチェック項目 すべて公開 — 数字の見方
・市民調査の読み方 — 意見の集め方の限界
このページは、やめ方の設計についての考え方の整理です。特定の事業や補助金の廃止を提案するものではありません。地方自治法の条文は e-Gov 法令検索の現行法令によります(2026年8月確認)。三郷市の計画の版・記載内容は未確認と明記しています。誤りを見つけたら教えてください。