まず、決算書に書いてある実数から
令和7年度決算の歳入歳出決算事項別明細書には、市税が税目ごとに「調定額・収入済額・不納欠損額・収入未済額」の4つの欄で並んでいます。調定額は「市が課税して、納めてくださいと確定させた額」。収入済額は「実際に入った額」。この2つの比が徴収率です。
| 税目 | 調定額 | 収入済額 | 徴収率 | 不納欠損額 | 収入未済額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 市民税 | 11,638,284,091 | 11,366,254,502 | 97.66% | 33,112,977 | 238,916,612 |
| 固定資産税 | 10,846,777,519 | 10,746,737,569 | 99.08% | 5,059,499 | 94,980,451 |
| 軽自動車税 | 280,811,561 | 265,847,596 | 94.67% | 1,721,500 | 13,242,465 |
| 市たばこ税 | 1,276,275,515 | 1,276,275,515 | 100.00% | 0 | 0 |
| 都市計画税 | 1,004,820,634 | 995,531,070 | 99.08% | 477,800 | 8,811,764 |
| 市税 合計 | 25,046,969,320 | 24,650,646,252 | 98.42% | 40,371,776 | 355,951,292 |
単位:円。三郷市議会 令和8年9月定例会 提出「令和7年度 三郷市一般会計歳入歳出決算事項別明細書」より。上の5行を足すと、決算書に印字された市税合計と、4つの欄すべてが1円まで一致します。この突き合わせが取れるまで、このページは公開しない方針で作りました。
徴収率は、まったく違う2つの数字の平均だった
市税の徴収は「現年課税分(その年に課税した分)」と「滞納繰越分(前年度までの未収を持ち越した分)」に分かれます。決算書はこれを別の行で書いています。合わせて98.42%ですが、中を開けると別世界でした。
| 区分 | 調定額 | 収入済額 | 徴収率 | 不納欠損額 | 収入未済額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 現年課税分 | 24,708,811,091 | 24,515,101,447 | 99.22% | 879,825 | 192,829,819 |
| 滞納繰越分 | 338,158,229 | 135,544,805 | 40.08% | 39,491,951 | 163,121,473 |
| 市税 合計 | 25,046,969,320 | 24,650,646,252 | 98.42% | 40,371,776 | 355,951,292 |
単位:円。決算書の現年・滞納の全13行(市民税個人・法人、固定資産税、国有資産等所在市町村交付金、軽自動車税の環境性能割と種別割、市たばこ税、都市計画税)をそれぞれ現年と滞納に分けて集計。この13行の合計も、4つの欄すべてが原本の市税合計と1円まで一致しています。
ここが、このページで一番言いたいことです
滞納繰越分は、調定額全体のわずか1.35%しかありません。にもかかわらず、収入未済額の45.8%、不納欠損額にいたっては97.8%を占めています。
つまり、現年課税分はほぼ取れている。三郷市の現年徴収率99.22%は、決して低い数字ではありません。取りきれずに残っているものの中身は、そのほとんどが「何年も前から払えていない分」です。ここには、事業がうまくいかなくなった方、病気になった方、家族の事情が変わった方が含まれます。
「徴収率を上げろ」という一言は、実務のうえでは「もう何年も払えていない人から、もっと取れ」とほぼ同義になります。それが正しい場合もありますし、そうでない場合もあります。だからこそ、数字の中身を見ないまま財源論として使うのは危ういと考えています。
動かしてみてください
残っている未収を、どこまで回収できたら、いくら増えるのか。現年課税分と滞納繰越分に分けて動かせます。初期値0%が令和7年度決算の実績そのものです。不納欠損として法的に消えた4,037万円はもう回収できないので、両方を100%にしても徴収率は99.84%までしか上がりません。その年度の徴収率が100%になることは、制度上ありえません。
徴収率シミュレーター
令和7年度決算の調定額を固定して計算「市の支出の何日分か」は、令和7年度一般会計の歳出決算71,149,760,890円を365日で割った1日あたり約1億9,493万円で換算しています。増収額の規模感をつかむための目安であり、特定の事業に充てられるという意味ではありません。
スライダーを両方100%にすると、どうなるか
制度上ありうる最大未収は全部で3億5,595万円しかないので、これが天井です。「徴収率を1ポイント上げる」は、実務上は「残っている未収の70%を、1年で取りきる」という意味になります。そして2ポイント上げることは、制度上できません。徴収率が99.84%止まりなのは、不納欠損4,037万円がすでに法的に消滅しており、回収の対象が残っていないためです。
「徴収率を上げれば財源が出る」の、正確な大きさ
数字を並べると、こうなります
・現年課税分をかりに100%にできたとして、増えるのは1億9,283万円(0.77ポイント相当)
・滞納繰越分をかりに100%回収できたとして、増えるのは1億6,312万円(0.65ポイント相当)
・両方を100%にして、ようやく3億5,595万円(1.42ポイント)
一般会計の歳出は711.5億円です。徴収を完璧にやりきって浮くのは、その0.5%にあたります。三郷市の財政に効かないとは言いません。3.56億円は、それ自体が大きなお金です。ただ、これを「財源はここから出せる」の主軸に置くと、話が合わなくなります。
私は、徴収の努力を軽く見ているのではありません。むしろ逆で、現年徴収率99.22%は、市の徴収担当がすでに相当な仕事をしている結果だと読んでいます。伸びしろが小さいのは、サボっているからではなく、もう取れているからです。
それでも、この数字を追いかける意味はあります
金額の大きさとは別に、徴収率には「公平性」の意味があります。同じ制度のもとで、納めた人と納めていない人がいる。この不公平を放置しないことは、税という仕組みそのものへの信頼に関わります。
だから私は、徴収率を財源確保の手段としてではなく、公平性の指標として見るべきだと考えています。目標の立て方も、報告のされ方も、そのほうが実態に合います。
「不納欠損4,037万円」は、どこへ消えたのか
決算書には毎年「不納欠損額」という欄があります。これは市が回収を諦めた額ですが、担当者の判断で自由に消せるものではありません。地方税法に、消える条件が3つ書いてあります。
不納欠損額4,037万円のうち97.8%が滞納繰越分でした。これは、上の3つの条件に当てはまるまで何年もかかるためで、構造上そうなります。逆に言えば、現年課税分の不納欠損はわずか87万9,825円——課税したその年に消えるケースは、ほとんどありません。
議会として、ここは見るべきだと考えています
不納欠損は「取りっぱぐれ」と読まれがちですが、実態はそう単純ではありません。執行停止(第15条の7)は、生活を守るために市が能動的に使う制度でもあります。財産がない人から無理に取り立てないための仕組みです。
ですから議会が見るべきは「不納欠損額が多いか少ないか」ではなく、その内訳が時効なのか執行停止なのかだと考えています。時効による消滅が多ければ、それは接触や督促が間に合っていないというサインです。一方、執行停止による消滅が多いなら、それは制度が想定どおり働いた結果かもしれません。同じ「不納欠損」でも意味が正反対です。
この内訳は決算書の本表には載っていません。私は、この区分を確認していきます。(2026年8月29日時点で、時効/執行停止の内訳は未確認です。分かり次第このページを更新します。)
「取り立てを強める」のか、「納めやすくする」のか
徴収率を上げる方法は、大きく2つの方向に分かれます。どちらか一方だけが正しいとは思っていません。ただ、この2つは同じ「徴収率向上」という言葉で語られがちなので、分けて置いておきます。
私自身は、現年課税分は「納めやすくする」、滞納繰越分は「早く接触する」という組み合わせが実態に合うと考えています。現年で取りこぼさなければ、そもそも滞納繰越分は生まれません。上の数字が示すとおり、滞納は古くなるほど回収率が落ち(40.08%)、不納欠損として消えていきます。
反対意見「3.56億円でも大金だ。天井が低いからやらなくていい、という話にすり替えていないか」
すり替えるつもりはありません。3億5,595万円は大金です。私が言いたいのは「やらなくていい」ではなく、「これを財源対策の主軸に据えると、規模が合わない」ということだけです。
徴収の努力はしたうえで、それでも足りない分をどうするかは別に考える必要があります。徴収率の話で財源論を終わらせてしまうと、その別の議論が始まりません。
反対意見「払える人が払っていないケースもある。困窮に配慮しすぎでは」
そのとおりで、両方あります。だから「一律に厳しく」も「一律に配慮」も間違いだと思っています。必要なのは仕分けです。
そして仕分けをするには財産調査が要り、財産調査には人手が要ります。徴収を強化するというのは、実際には徴収部門に人を置くかどうかという人員配置の話です。増収3.56億円が上限だと分かっていれば、そこに何人まで置くのが妥当かも計算できます。天井を知ることは、諦めることではなく、投資判断の前提です。
反対意見「他市と比べて三郷市の徴収率は高いのか、低いのか。それを書かないと評価できない」
そのご指摘は正しく、そしてこのページの現時点での弱点です。他市との比較は、総務省の市町村別決算状況調で取れるはずですが、2026年8月29日時点で私はまだ同一年度・同一定義での比較表を確認できていません。
推測で「高い」「低い」と書くことはしません。確認でき次第、このページに追記します。
市にできること、市にはできないこと
徴収の話は、市の裁量でどこまで動かせるのかが分かりにくい分野です。税率も、時効の年数も、市が勝手に決められるものではありません。
行政のどこまでが市の裁量で、どこからが国と県の制度なのか。全体像は 市の権限がどこまで及ぶか と 行政のしくみ にまとめています。市の予算そのものについては 予算のページ をご覧ください。