Rules Written Before the Internet
三郷市議会の例規21件を全文検索して、「オンライン」は
0
「デジタル」も「災害」も「手話」も、1件も出てきません
70
定例会条例が一度も改正されていない年数
14
議会基本条例が実質的に変わっていない年数
8
21件のうち制定以来まったく改正がないもの

傍聴席では、スマートフォンの電源を切ることになっている。

議会のルールは、条例と規則でできています。三郷市議会に関するものは21件。その全文を検索しても、「オンライン」「デジタル」「災害」「手話」は一度も出てきません。市が悪いという話ではなく、書かれた時代がそうだった、というだけです。ここでは条文をそのまま引きながら、技術の進み方を踏まえると見直す価値がありそうな論点を並べます。結論は書きません。これは私の仮説です。

The Words That Are Missing

出てこない言葉

三郷市議会に関する例規21件を、まるごとダウンロードして全文検索しました。次の言葉は、どこにも書かれていません。(市の例規は全部で965件あります。全件の一覧は 三郷市の例規、ぜんぶ に。)

0

21件のどこにも出てこない言葉

オンライン遠隔ウェブ会議情報通信技術デジタル手話点字合理的配慮災害通年キャッシュレス電子領収書

一方で、個人情報保護は令和4年に条例が整備され、政治倫理条例と請負の状況の公表に関する条例は令和7年に新しくつくられています。法律の改正には、きちんと追いついています。動いていないのは、議会が自分のあり方を決めている部分です。

21 Rules

21件が、いつ書かれて、何回直されたか

赤い行は、制定から一度も改正がなく、最後に手が入ってから30年以上たっているものです。薄い黄色は12年以上動いていないもの。

例規制定最終改正改正経過
三郷市議会事務局職員の人事評価の実施に関する規程規程2025202501
三郷市議会議員の請負の状況の公表に関する条例施行規程規程2025202501
三郷市議会議員徽章規程規程20082008018
三郷市議会議員政治倫理条例施行規程規程2025202501
三郷市議会定例会条例条例19561956070
三郷市議会事務局設置条例条例19601960066
三郷市議会議員の請負の状況の公表に関する条例条例2025202501
三郷市議会議員政治倫理条例条例2025202501
三郷市議会基本条例条例20122012114
三郷市議会定例会に関する規則規則1956202016
三郷市議会の議員の定数を定める条例条例20002011215
三郷市議会議員被服等貸与規程規程2008201828
三郷市議会公印規程規程1976202026
三郷市議会の個人情報の保護に関する条例条例2022202521
三郷市議会の個人情報の保護に関する条例施行規程規程2023202620
三郷市議会傍聴規則規則19932012314
三郷市議会政務活動費の交付に関する条例施行規則規則2001201848
三郷市議会政務活動費の交付に関する条例条例2001201858
三郷市議会事務局規程規程19982008618
三郷市議会会議規則規則19722021115
三郷市議会委員会条例条例19912026180

出典:三郷市例規集(2026年9月1日取得)。改正回数は、各例規に付いている附則の年月日を私が数えたものです。沿革表示の重複を除くため、年月日の組で一意にしています。市が公表している数え方と一致するとは限りません。「経過」は最終改正からの年数です。

Five Points

見直す価値がありそうな5つ

条文はすべて例規集の本文から、そのまま引いています。★は私が付けた優先度で、議会が決めたものではありません。

1

★★★

条例が自分で「検証しろ」と書いている

三郷市議会基本条例 平成24年条例第24号/改正1回・14年

第18条 議会は、この条例の施行後、社会情勢の変化等を勘案して、この条例の目的が達成されているかどうかについて検証を行い、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるものとする。

第18条(検証)

この14年のあいだに、感染症の世界的な流行があり、デジタル手続法ができ、議会のオンライン化が全国で進みました。「社会情勢の変化」がなかったとは、言いにくいと思います。

まず問うべきは、条例を変えるかどうかではありません。第18条が求めている検証が、実際に行われたのかどうかです。行われたのなら記録がどこにあるのか。行われていないのなら、なぜか。そこから始めるのが筋だと考えています。

もうひとつ、同じ条例のなかに気になる非対称があります。

第16条第2項 議会は、情報技術の発達を踏まえた多様な広報手段を活用することにより、多くの市民が議会と市政に関心を持つよう広報活動の充実に努めるものとする。

第16条第2項(議会広報の充実)

広報については情報技術を位置づけているのに、議会運営そのものには一言もありません。知らせ方は新しくするが、決め方は変えない。この線引きに理由があるのかどうかを、確かめたいところです。

2

★★★

傍聴席では、スマートフォンの電源を切ることになっている

三郷市議会傍聴規則 平成5年議会規則第1号/改正3回・最終2012年

第8条 傍聴人は、傍聴席へ入場し退場するまで、次の事項を守らなければならない。(5)電子機器類(補聴器を除く。)を携帯して入場する場合は、その電源を切ること。ただし、議長の許可を得た場合は、この限りでない。

第8条第5号

電源を切るということは、メモを取ることも、資料を画面で見ることもできないということです。静かにしてほしいということであれば、「音が出ないようにすること」で足りるのではないか。

ほかにも、いまの感覚から見て説明が要りそうな条文があります。

第3条 会議を傍聴しようとする者は、議会事務局に申し出て、所定の場所で自己の住所及び氏名を傍聴人受付簿に記入しなければならない。
第9条 傍聴人は、傍聴席において写真、動画等を撮影し、又は録音等をしてはならない。ただし、特に議長の許可を得た者は、この限りでない。

第3条・第9条

傍聴に住所まで書かせること。市民が議会を記録して発信することを原則禁止にしていること。一方で議会基本条例第5条は「公開する本会議等の傍聴を広く市民に促すものとする」と定めています。促す側の規定と、受け入れる側の規定が、同じ方向を向いているかどうか。

なお別表では、危害を加えるおそれのある物の例として「棒、プラカード、杖(疾病その他正当な理由がある場合を除く。)及びこれに類するもの」と書かれています。括弧で除外はされていますが、杖を使う方がこれを読んだときにどう感じるか。書きぶりとして見直す価値があると思います。

3

★★★

欠席は認めているのに、出席する手段は用意されていない

三郷市議会会議規則・委員会条例 会議規則 改正11回・最終2021年/委員会条例 改正18回・最終2026年

第91条 委員は、公務、疾病、育児、看護、介護、配偶者の出産補助その他のやむを得ない事由のため出席できないときは、その理由を付け、当日の開議時刻までに委員長に届け出なければならない。
2 委員は、出産のため出席できないときは、出産予定日の6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)前の日から当該出産の日後8週間を経過する日までの範囲内において、その期間を明らかにして、あらかじめ委員長に欠席届を提出することができる。

会議規則 第91条(本会議は第2条に同趣旨の規定)

育児・看護・介護・出産で出られないときは休んでよい、と規則は定めています。ここは既に手当てされています。けれど、その人が議論に参加する方法は用意されていません。

国は令和2年と令和5年の通知で、委員会について映像と音声の送受信により相互に状態を認識しながら通話できる方法での開催を各議会の判断で可能としています。全国で実際に導入した議会があります。

休むことは認めるが、出る手段は与えない。この不整合が、いちばん説明しやすい切り口だと考えています。

4

★★

紙の領収書を前提にしたまま止まっている

三郷市議会政務活動費の交付に関する条例・施行規則 平成13年/いずれも最終改正2018年

議会編21件を全文検索しても、「キャッシュレス」「電子領収書」は1件も出てきません

オンラインのセミナー、電子書籍、クラウドサービスの利用料。いま調べものをしようとすると、紙の領収書が出ない支出が普通に発生します。それを収支報告でどう扱うのか、規定がありません。

これは「無駄づかいを許すか」という話ではなく、1円単位で報告する制度を、いまの支払い方に合わせられるかという話です。政務活動費のしくみは 政務活動費は月3万円 にまとめました。

5

本文が一行しかない

三郷市議会定例会条例 昭和31年条例第2号/制定から70年、改正0回

地方自治法(昭和22年法律第67号)第102条第2項の規定による三郷市議会の定例会の回数は、毎年4回とする。

本則(全文)

これが条例の全文です。昭和31年9月30日に公布されてから、一度も改正されていません。

古いから直すべきだ、と言いたいのではありません。平成24年の地方自治法改正で、会期を通年にする選択ができるようになりました。採るか採らないかは議会運営の方針の問題であって、技術の話ではありません。

ただ、災害が起きたときに議会をすぐ開けるかという観点からは、この一行をそのままにしておくかどうかを、一度は議論する価値があると考えています。

Who Decides

どれが、議会だけで直せるのか

種別
直すのに何が要るか
規則・規程傍聴規則/会議規則
議会の意思だけで直せます。市長の提案も、市民の同意も要りません。議会が決めれば、それで変わります。傍聴席の電子機器の話も、ここに入ります。
条例基本条例/委員会条例/定例会条例/政務活動費条例
議会の議決が要ります。議員も提出できます(地方自治法第112条・議員定数の12分の1以上の賛成が必要)。委員会も提出できます(同第109条第6項)。
法律本会議のオンライン開催
本会議に議員が「出席」したと言えるかは、地方自治法の解釈に関わります。市議会だけでは決められない部分があります。委員会については、国が各議会の判断で可能としています。

つまり、いちばん市民に近い傍聴規則が、いちばん直しやすいということです。議会の権限の全体像は 市にできること、できないこと、議会のしくみは 会議規則をわかりやすく にあります。

Honest Notes

断定していないこと

前提これは提案ではなく、仮説です

ここに書いたのは、条文を読んで「これは見直す価値がありそうだ」と私が考えた論点です。議会に提案した内容でも、議会が決めたことでもありません。

例規の改正は、議会運営委員会での議論を経るのが通例です。私ひとりで決められることは、ひとつもありません。まず議論を起こすために、材料を公開しています。

率直な疑問「古いから直せ、という話ではないのでは」

そのとおりです。年数だけを理由に直すべきだとは考えていません。定例会条例が70年変わっていないのは、毎年4回でうまくいってきたからかもしれません。

見直す理由になるのは、年数ではなく不整合です。欠席は認めるのに出席手段がない。広報にはICTを書いているのに運営には書いていない。傍聴を促すと言いながら住所を書かせる。そこに説明がつくかどうかを聞きたい、というのがこのページの趣旨です。

このページの弱点「検証が行われていない、と断定していないか」

断定していません。議会基本条例第18条の検証が実際に行われたかどうかは、2026年9月1日時点で私は確認できていません。改正がないことと、検証をしていないことは別です。

検証したうえで「変える必要なし」と判断した記録があるのなら、それはそれで筋が通ります。まず確かめるべきはそこだと考えています。

このページの弱点「他市がどうしているかが書かれていない」

そこは弱いままです。オンライン委員会を導入した議会が全国にあることは把握していますが、個別の議会の条文と時期を一次資料で確認するところまでは、2026年9月1日時点でできていません。確認でき次第、追記します。

Sources & Method

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
条文の読み違いを見つけたら教えてください。直して、直した記録を残します。