三郷市議会には、2種類の会議体があります
法令・条例に根拠を持つ会議体
本会議(地方自治法)、常任委員会・議会運営委員会・特別委員会(自治法109条)など。これらには条例・規則上の設置根拠と所管があり、会議は原則として公開され、権限と責任の所在が明確です。
とりわけ議会運営委員会の所管は、法律が直接定めています。自治法109条3項により、議会運営委員会は①議会の運営に関する事項、②議会の会議規則・委員会に関する条例等に関する事項、③議長の諮問に関する事項について調査を行い、議案・請願等を審査する機関です。議題をどう扱うかは、まさにこの「議会の運営に関する事項」に当たります。三郷市議会会議規則も、議会運営委員会がこの109条3項の調査を行うことを前提に規定しています(規則105条2項)。
任意の会議体
党会派代表者会議、議会だより委員会など、法令や会議規則に根拠を持たない、運用上の会議体です。任意の会議体そのものが悪いわけではありません。会派間の情報伝達や日程の連絡など、調整を効率化する場として機能する限り、有用です。党会派代表者会議も本来は、会派どうしの情報伝達をする場として設けられているものです。
ここで大事なのは、法律には任意の会議体を正規に位置づける道が既に用意されていることです。自治法100条12項は「議会は、会議規則の定めるところにより、議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場を設けることができる」と定めています。しかし三郷市議会会議規則には、この「協議等の場」の定めはなく、代表者会議に関する記載もありません(2026年7月時点の例規集で確認)。つまり代表者会議は、法が用意した位置づけの枠外で運用されている状態です。
この1年、感じてきた課題
「連絡の場」が「決定の場」に踏み込んでいる
この1年間、議会の運営を内側で見てきて感じているのは、党会派代表者会議が情報伝達の機能を超えて、本来は議会運営委員会が担うべき範囲まで踏み込んでいるのではないか、ということです。
例えば三郷市議会では、議案・議題を議会運営委員会で取り上げるかどうかの実質的な判断まで、党会派代表者会議の場で行われていると私は受け止めています。会派間の合意形成をスムーズにするため——その理屈は一定理解します。しかし「連絡」と「決定」は別物です。
なぜ立ち止まって考えたいのか——3つの構造的リスク
① 会派に属さない議員の声が、入口で消える——代表者会議は会派の代表で構成されます。会派に所属しない議員はそこに席がありません。議題の採否が実質的にこの場で決まるなら、無所属議員の提案は議会運営委員会に上がる前の段階で検討されない構造になります。無所属議員も、同じ市民から選ばれた議員です。
② 決定の所在が、市民からたどりにくくなる——代表者会議にも議事録は残されています。ただ、会議規則を確認しても代表者会議の設置根拠や所管の定めはなく(前述)、市民の側から見ると「どの場で・何の権限に基づいて判断されたのか」を条例・規則からたどれない構造です。実質的な判断が前段の場に移るほど、この検証のしにくさは大きくなります。
③ 条例の理念とずれる——三郷市議会基本条例は、議会が合議制の機関であること、議員相互の自由な討議を重んずることを議員の活動原則に掲げています(次のセクション)。前段の絞り込みが特定の場に集中する運用は、この理念に照らして検証が必要だと感じています。
私がこの問いを立てる理由
実は当選した当時、私は会派に入らない選択も本気で考えていました。政策ごとに是々非々で判断するなら、無所属という立場もあり得る——最終的に、理念を共有できる会派(創政MISATO)に加わりましたが、それは紙一重の選択でした。
もしあのとき無所属を選んでいたら、いま私が出す提案は、議会運営委員会に上がる前の場で判断され、私はその場にいなかったことになります。声が議論の入口に届くかどうかが、政策の中身ではなく、所属の選択で決まってしまわないか——自分がそちら側にいたかもしれないからこそ、この運営スタイルのままでいいのかを、問わないといけないと感じています。
よりどころは、三郷市議会基本条例です
議員の活動原則(第4条)
第4条 議員は、次に掲げる原則に従って活動するものとする。
(1) 高い倫理性を保持し、公正かつ清廉を基本姿勢とすること。
(2) 市民全体の福祉の向上を目指すこと。
(3) 不断の研さんに努め、自己の資質を高めること。
(4) 議会が合議制の機関であることを十分に認識し、議員相互の自由な討議を重んずること。
2 議員は、議会活動を行うため、政策を中心とした同一の理念を共有する議員で会派を結成することができる。
— 三郷市議会基本条例(強調は筆者)
合議制の機関とは、全議員の討議で決める機関ということです。同じ4条は会派の結成も定めており(2項)、会派制と自由な討議は本来両立するものです。ただ、討議の入口が会派の代表者だけの場に事実上限定されるなら、「議員相互の自由な討議を重んずる」という原則に反しているのではないか——私はそう感じています。
基本条例はほかにも、会議公開の原則(5条)と議員相互の討議の積極的な実施(12条)を定めています。公開と討議——この条例が議会運営に求めている2つの柱に照らして、いまの運用を点検したい、というのがこのページの趣旨です。
民主主義の機能とは何か
民主主義は、誰かの好き嫌いで動くものではありません。誰が出したアイデアかに関係なく、数の力ではなく、三郷市の利益を第一に、冷静に検討する——それを保証するのが、条例と規則に定められた会議体で、記録に残る形で決めるという手続きです。「連絡」のための任意の会議体が「決定」の領域まで入り込む構造は、この機能の根底を静かに揺らしかねません。手続きと決定の場所を軽んじたときに何が起きるか——それを私たちは、除名処分が違法と判断された経験で学んだばかりだと、私は受け止めています。
改善の方向——4つの提案
構造を直す4つの選択肢
① 役割の明文化——党会派代表者会議の役割を「情報伝達・日程等の連絡調整」に限定して明文化し、議題の採否の判断は議会運営委員会(自治法109条3項の所管)に戻す。明文化には自治法100条12項の「協議等の場」として会議規則に位置づける方法があり、これは新しい発明ではなく法律が用意している正規の手続きです。
② 無所属議員の経路の保障——会派に属さない議員も議会運営委員会へ議題を提案できる仕組み(文書による提案権、オブザーバー出席など)を設ける。
③ 議事録のアクセス性——代表者会議の議事録は作成されています。その公開の状況を点検し、市民が議会ホームページなどから容易にたどれる形に整える。連絡の場であれば、公開しやすいはずです。
④ 基本条例の自己点検——4条(4)に照らして議会運営を定期的に点検する仕組みをつくる。条例は掲げるだけでなく、運用を測る物差しとして使う。
反対意見にも、答えます
「代表者会議で整理しないと、議運が回らない」
効率は大切ですが、目的ではなく手段です。議題の整理・絞り込みが必要なら、それは法定の場である議会運営委員会の中で、記録に残る形でやればよい——場所を変えるだけで、効率は維持できます。
「会派制を否定するのか」
否定しません。私自身が会派(創政MISATO)に所属し、会派での合意形成の価値を日々実感しています。基本条例も会派の結成を明記しています(4条2項)。問題にしているのは会派制ではなく、会派間の連絡の場が、議会としての決定の場を代替してしまう構造です。
「1年目が運営に口を出すのは早い」
むしろ1年目だから見えるものがあると考えています。慣例に馴染みきる前の目で見た違和感は、市民の目線に一番近い。違和感を覚えた構造に馴染んでしまう前に、記録として残し、議論を提起するのが誠実だと判断しました。
あわせて読む
この提起の土台になっている考え
・地方議員の職責とは何か — 議員は合議制の機関の担い手
・除名審決を読む — 手続きを軽んじた決定がどう覆されたか
・議会ってなに? — 法定の会議体のしくみ
・会議規則をわかりやすく — 議会のルールブック