「ご家庭のご協力を」が、
積み上がっている。
一つひとつは、小さなお願いです。朝30分の旗振り。長期休みのお弁当。指定の袋を手づくりで。連絡帳の確認。地域の見守り当番。 どれも「協力」という言葉で来ますが、断る選択肢は、実際にはほとんどありません。
そして、これらは足し算でしか増えません。やめる決定をした人が、どこにもいないからです。 誰かが決めて増やしたわけではなく、「前からやっているから」で続いているものが、かなりあります。
放課後児童クラブのうち、長期休みに昼食の提供が「ない」クラブの割合(全国25,635クラブのうち14,609クラブ・こども家庭庁 令和6年)。 残りの43.0%は提供があります。やり方が無いのではなく、やっている所とやっていない所があるということです。
自助・共助・公助は、
順番の話ではない。
「まず自助。それでも無理なら公助」——この読み方が、家庭を追い込みます。
補完性の原則が言っているのは、できることは身近な単位で担い、担えないことは上が引き受けるということです。 順番に耐えろ、という意味ではありません。誰が、どこまで担うのか に、国・県・市・自治会・個人の5層で整理しています。
このページはその中の、家庭・学校・行政の3者に絞った話です。子育てと教育の場面では、ここがいちばん混ざりやすいからです。
誰が担うべきかを、
4つの物差しで決める。
「家庭がやるべきだ」「行政がやるべきだ」は、どちらも結論から入っています。先に物差しを決めておけば、個別の話で揉めません。
- 01それは、選べるか「任意です」と書いてあっても、断ると子どもが困る、周りの目が気になる——それは事実上の義務です。選べないものを「自主的な協力」と呼ばないこと。ここを正直にするだけで、話がまっすぐになります。
- 02できない家庭が出たとき、その子はどうなるかひとり親、共働き、病気、日本語が第一言語でない、家族の介護をしている。担えない事情は、その家庭の努力不足ではありません。「大半の家庭はできている」で設計すると、できなかった家の子どもだけが損をします。
- 03代われる人は、いるか同じことを、お金や人手で代われるなら、そこには選択肢があります。代われないなら、それは家庭に固定された負担です。「代われるのに、代えていないだけ」なのか、「代わりようがない」のかを分ける。
- 04その費用は、誰が持っているかお金だけではありません。時間も費用です。平日の朝に30分立つ、長期休みのあいだ毎日つくる。それを金額に置き換えたことがあるか。持っている人が誰かをはっきりさせないと、「タダでできること」として積み上がります。
三つの場面に、
当てはめてみる。
物差しは、使ってはじめて役に立ちます。よくある3つで試します。
通学路の見守り
朝の旗振り当番- 選べるか
- 当番表が回ってくる形なら、事実上は義務に近い
- できない家庭は
- 早朝勤務、夜勤明け、乳児がいる家では代われる人がいない
- 代われる人は
- シルバー人材・見守り員・地域のボランティア。実際、下校時はそうしている地域がある
- 費用は
- 保護者の時間。金額に換算されたことは、ほとんどない
朝と夕方で担い手が違うなら、その差は「必要だから」ではなく「たまたま」かもしれません。安全の水準を落とさずに、誰が立つかを組み替えられる場面です。
長期休みの昼食
夏休みの学童のお弁当- 選べるか
- 持たせなければ、その子が食べられない。選べない
- できない家庭は
- 朝の30分がとれない家がある。毎日、40日近く続く
- 代われる人は
- 給食センターの活用、事業所での手配。全国で実施している自治体がある
- 費用は
- 保護者の時間と材料費。夏場は食中毒のリスクも家庭が負う
こども家庭庁の調べでは、全国25,635クラブのうち昼食提供があるのは11,026クラブ(43.0%)。残りの57.0%は提供がありません。やり方が無いのではなく、やっている所とやっていない所があるということです。
部活動
休日の指導と引率- 選べるか
- 先生にとっても、保護者にとっても、断りにくい空気があった
- できない家庭は
- 送迎や当番を担えない家の子が、続けにくくなる
- 代われる人は
- 地域の指導者。国が地域移行の枠組みを進めている
- 費用は
- 指導者への対価をどこから出すかが、まだ決まりきっていない
学校から外に出せば解決、ではありません。受け皿と、指導者に払うお金を用意しないと、負担が学校から家庭と地域に移るだけになります。
私が考える、3つのスコープ。
この3つは、押し付け合いの線引きではありません。 どこが抜けると子どもに届かなくなるかを、先に決めておくためのものです。
家庭に足すのではなく、
代われるようにする。
担い手を家庭から他所へ移すことが目的ではありません。 代われる人がいる状態をつくることです。 下校時には慣れた方が立っている地域があるように、代わりようは、すでに現場にあります。
学校にも学童にも、これ以上やることを足しません。
現場はすでに手いっぱいで、そこに新しい仕事を乗せると、いちばん先に子どもへしわ寄せが出ます。 現場が選んだやり方を、市が下支えする。 市が引き受けるのは、お金と場所と、ルールと、担い手との繋ぎ。 やり方そのものは現場が決めるほうが、早く、続きます。
- 01長期休みの昼食つくるのは家庭の役割です。そのうえで、つくれない事情が続く家の子が、食べられないままにはならない。線をどこに引くかを、先に決めます。
- 02朝の見守り下校時と同じように、立てる人が立ちます。安全の水準は落としません。地区によって当番の重さが違うなら、それは家庭の努力の差ではなく担い手の配り方の差で、配り方は変えられます。
- 03やめる決定足す決定と同じ数だけ、やめる決定を置きます。増えるだけの仕組みは、いつか止まります。やめた記録も残します。
家庭を、
最後の砦にしない。
頑張れる家庭が頑張ること自体は、悪いことではありません。 問題は、頑張れなかった家の子どもが、それだけで不利になる設計のほうです。 そこを埋めるのが、行政の仕事だと考えています。