Disciplinary Action
議会が、自分たちの中の秩序を、自分たちで保つための仕組み
議会は、議員を
罰することができます。
地方自治法134条は、法律や会議規則に違反した議員に対し、議会が議決により懲罰を科すことができると定めています。罰は4種類あり、いちばん重いものは議員の身分を失う除名です。だからこそ、始め方から決め方まで、手続きが細かく定められています。
4種類
戒告/陳謝/出席停止/除名
3
動議の発議に必要な人数(定数24)
3日以内
動議を提出できる期限

懲罰動議とは、どういうものか。

根拠は地方自治法134条〜137条三郷市議会会議規則 第6章です。どういう制度で、どう始まり、何が起きるのかを、条文を引用しながら順に整理します。特定の事案を論じるものではありません。

What It Is

そもそも、何のための制度か

地方自治法 第134条
普通地方公共団体の議会は、この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員に対し、議決により懲罰を科することができる
2 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。

ポイントは2つです。まず対象が限定されていること。法律・会議規則・委員会条例に違反した議員が対象であって、気に入らない発言をした議員が対象なのではありません。

もうひとつは「議決により」という部分です。議長が一人で決めることも、誰かとの話し合いで決めることもできません。議会が議決しなければ、懲罰は成立しません。

この制度の性格
議会が、自分たちの中の秩序を、自分たちで保つための仕組みです。
外部の機関ではなく議会自身が判断するからこそ、手続きが細かく定められています。
Scope

どこまでが、懲罰の対象になるのか

ここを外すと、制度を大きく読み違えます。懲罰は、何をしても科せるものではありません。

条文をもう一度見ます。自治法134条1項が対象としているのは「この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員」です。会議規則も委員会条例も、議会の運営についてのルールです。つまり、そこに違反する行為は基本的に議会の会議や委員会の中で起きます。

対象は、議会の中でのこと
懲罰の対象になるのは、一般に議会の会議または委員会における議員の行為とされています。
議場の外での政治活動や、私生活上の行為は、懲罰では扱えません。気に入らない相手を懲罰にかける、という使い方ができないのは、この限定があるからです。

三郷市議会会議規則が、懲罰動議の提出期限を「懲罰事犯があった日から起算して3日以内」としているのも(160条2項)、これと整合しています。会期中に、その場で起きたことを、その場で処理するという前提の期限です。半年前の出来事を持ち出すことは想定されていません。

例外は、地方自治法137条の招集に応じない・会議を欠席する場合です。これは議場に来ないことについての規定なので、わざわざ別の条文で定められています。裏を返せば、条文に書かれていない議場外の行為は対象にならない、ということでもあります。

では、議場の外のことは、どうなるのか

そのために別の制度があります。政治倫理条例です。三郷市議会議員政治倫理条例3条が定める基準には、明らかに議場の外の行為が含まれています。

三郷市議会議員政治倫理条例 第3条(抜粋)
(7) 政治活動に関し、政治資金規正法に規定する寄附以外の寄附を企業、団体、個人等から受けないこと。
(8) その地位を利用して他者へのハラスメント行為、誹謗中傷その他の人権侵害のおそれのある行為をし……ないこと。
(9) 発言又は情報発信(ウェブサイト等への掲載を含む。)は、公人としての自覚及び責任をもって行い、他者の名誉を棄損し、又は人格を損なう一切の行為をしないこと。

9号には「ウェブサイト等への掲載を含む」とはっきり書かれています。議場での発言だけでなく、SNSや個人サイトでの発信も対象だということです。7号の寄附も、8号の地位を利用した行為も、議場の中で起きるものではありません。

2つの制度は、こう分かれています
議場の中の規律を保つのが懲罰。
議員という立場そのものに関わる行為を扱うのが政治倫理。
——役割が違うので、入れ替えて使うことはできません。
Four Levels

罰は4種類。重さの順に決まっています

地方自治法 第135条第1項
懲罰は、左の通りとする。
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
種類内容決め方
1. 戒告公開の議場で、議会が決めた戒告文を 読み上げられる。「いましめる」という意味。出席議員の過半数
2. 陳謝公開の議場で、議会が決めた陳謝文本人が読み上げる。文面は本人が書くのではなく議会が決めます出席議員の過半数
3. 出席停止一定期間、会議にも委員会にも出られない。10日を超えることはできません(会議規則163条)。出席議員の過半数
4. 除名議員の身分を失います。最も重い処分。3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意
三郷市議会会議規則 第162条・第165条
第162条 戒告又は陳謝は、議会の決めた戒告文又は陳謝文によって行うものとする。
第165条 議会が懲罰の議決をしたときは、議長は、公開の議場において宣告する。

4つに共通するのは、すべて議会の議決を経て科されるものだという点です。戒告と陳謝は文面を議会が決め、出席停止は期間を議会が決め、除名は特別多数の同意が要る。本人の意思や、当事者どうしの話し合いで決まる部分はありません。

陳謝が「謝ること」ではなく「議会が決めた文面を、公開の議場で読み上げること」だというのは、その一例です。何をどう詫びるかを決めるのは本人ではありません。4つとも、罰だからです。

Process

どうやって始まり、どう決まるのか

1
3人が連署して、文書で出す
懲罰の動議は定数の8分の1以上の発議が必要です(自治法135条2項)。三郷市議会は定数24なので3人。会派の要件はありません。文書に、発議者が連署して議長に提出します(会議規則160条1項)。
2
期限は「3日以内」
動議は懲罰事犯があった日から起算して3日以内に提出しなければなりません(会議規則160条2項)。とても短い。あとから蒸し返して処分することができない仕組みです。ただし秘密の保持に関する違反は、この期限の対象外です。
3
必ず委員会で審査する
ここが重要です。会議規則161条は「委員会の付託を省略して議決することができない」と定めています。他の議案では省略できる場合がありますが、懲罰だけは省略できません。本会議でいきなり採決することはできない、ということです。
4
本会議で議決する
委員会の審査を経て、本会議で議決します。戒告・陳謝・出席停止は出席議員の過半数除名だけは、3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要です(自治法135条3項)。定数24なら、16人以上の出席とそのうち12人以上の同意が要ります。
5
公開の議場で宣告される
議決したら、議長が公開の議場で宣告します(会議規則165条)。非公開で伝えたり、書面で済ませたりはできません。罰であることが、公に示されます。
省略できないもの、していいもの
省略できない:委員会への付託(会議規則161条)/公開の議場での宣告(同165条)/議会の議決(自治法134条1項)
そもそも存在しない議決を経ずに、話し合いで謝罪させる手続き——条文のどこにもありません。
Effects

科されると、何が起きるか

戒告・陳謝
議員の資格は失わない
投票権も発言権も残ります。ただし公開の議場で宣告され、会議録に残ります。失うのは権限ではなく、信用のほうです。
出席停止
その期間、仕事ができなくなる
会議にも委員会にも出られません。期間中に出席したら、議長が直ちに退去を命じます(会議規則164条)。上限は10日です。
除名
議員でなくなる
身分を失います。ただし——選挙で選び直された場合は、議会はその人を拒めません。
地方自治法 第136条
普通地方公共団体の議会は、除名された議員で再び当選した議員を拒むことができない。

短い条文ですが、意味は重いと思います。議会が最も重い罰を科した相手でも、有権者がもう一度選んだのなら、議会はそれを覆せない。議員の資格を最終的に決めるのは議会ではなく選挙だ、ということです。

出席停止は、裁判で争えます
かつて最高裁は「除名以外は議会の内部問題」として司法審査の対象外としていましたが、令和2年11月25日の大法廷判決でこれを変更し、出席停止の懲罰も司法審査の対象になるとしました。議会の判断が、常に最終ではないということです。
Absence

欠席し続けた場合の規定もあります

地方自治法 第137条
議会の議員が正当な理由がなくて招集に応じないため、又は正当な理由がなくて会議に欠席したため、議長が、特に招状を発しても、なお故なく出席しない者は、議長において、議会の議決を経て、これに懲罰を科することができる。

正当な理由がなく欠席を続け、議長が招状を出してもなお出てこない場合の規定です。ここでも「議会の議決を経て」と書かれています。議長の一存では決められません。

Comparison

政治倫理審査会との違い

似た場面で使われますが、目的も要件もまったく違う制度です。

懲罰動議政治倫理審査会
対象になる行為議会の会議・委員会での行為(自治法134条1項)議場の外の行為も含む(条例3条。寄附・地位を利用した行為・ウェブサイトでの発信など)
目的罰すること事実があったかを確かめること
根拠地方自治法134〜137条
三郷市議会会議規則 第6章
三郷市議会議員政治倫理条例
始めるのに必要な人数3人(定数の8分の1)6人(定数の4分の1)
会派の要件なし2会派以上にまたがること
期限3日以内行為の日から1年以内
市民が使えるか使えない(議員のみ)使える(有権者の50分の1以上)

罰する入口のほうが、確かめる入口より広くなっています。3人あれば会派を問わず出せる懲罰動議に対し、審査請求は6人かつ2会派以上。この非対称については 政治倫理審査会のページ で詳しく書きました。

整理すると
2つは別の制度です。罰するには懲罰の手続き(3人の発議・委員会付託・議決・宣告)が要り、事実を確かめるには審査会の手続き(6人以上・2会派以上の請求)が要ります。
片方の手続きを省いて、もう片方の結論だけを持ってくることはできません。
たとえば陳謝は懲罰の一種ですから、懲罰の手続きを経ずに科すことはできません。
Balance

この制度を、どう見るか

懲罰は、議会が自分たちで秩序を保つために必要な仕組みだと思います。議場が成り立たなくなれば、審議そのものができません。

同時に、使い方を誤ると、少数意見を黙らせる道具にもなります。3人で発議できるということは、それだけ入口が広いということでもあります。だからこそ条文は、委員会での審査を省略させず、公開の議場で宣告させ、除名には特別多数を求めているのだと思います。

私が大事だと思っていること
手続きは、誰かを守るためだけにあるのではありません。
手続きを守ることが、その判断は正しかったと後から言えるための、唯一の根拠になります。
わかりにくいところがあれば、教えてください
議会の手続きは、条文を読んでも意味がつかみにくいものが多くあります。「ここがわからない」と言っていただければ、条文に当たって書き足します。
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本ページは「鈴木優作調べ」です。条文の引用は原文どおりですが、解説と整理は私個人によるもので、市・議会・会派の公式見解ではありません。特定の事案について誰かを論じるものではなく、制度そのものの説明です。実際の運用は各議会の判断によります。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
手続きを守ることが、その判断が正しかったと後から言えるための根拠になる。