そもそも、何のための制度か
2 懲罰に関し必要な事項は、会議規則中にこれを定めなければならない。
ポイントは2つです。まず対象が限定されていること。法律・会議規則・委員会条例に違反した議員が対象であって、気に入らない発言をした議員が対象なのではありません。
もうひとつは「議決により」という部分です。議長が一人で決めることも、誰かとの話し合いで決めることもできません。議会が議決しなければ、懲罰は成立しません。
外部の機関ではなく議会自身が判断するからこそ、手続きが細かく定められています。
どこまでが、懲罰の対象になるのか
ここを外すと、制度を大きく読み違えます。懲罰は、何をしても科せるものではありません。
条文をもう一度見ます。自治法134条1項が対象としているのは「この法律並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員」です。会議規則も委員会条例も、議会の運営についてのルールです。つまり、そこに違反する行為は基本的に議会の会議や委員会の中で起きます。
議場の外での政治活動や、私生活上の行為は、懲罰では扱えません。気に入らない相手を懲罰にかける、という使い方ができないのは、この限定があるからです。
三郷市議会会議規則が、懲罰動議の提出期限を「懲罰事犯があった日から起算して3日以内」としているのも(160条2項)、これと整合しています。会期中に、その場で起きたことを、その場で処理するという前提の期限です。半年前の出来事を持ち出すことは想定されていません。
例外は、地方自治法137条の招集に応じない・会議を欠席する場合です。これは議場に来ないことについての規定なので、わざわざ別の条文で定められています。裏を返せば、条文に書かれていない議場外の行為は対象にならない、ということでもあります。
では、議場の外のことは、どうなるのか
そのために別の制度があります。政治倫理条例です。三郷市議会議員政治倫理条例3条が定める基準には、明らかに議場の外の行為が含まれています。
(8) その地位を利用して他者へのハラスメント行為、誹謗中傷その他の人権侵害のおそれのある行為をし……ないこと。
(9) 発言又は情報発信(ウェブサイト等への掲載を含む。)は、公人としての自覚及び責任をもって行い、他者の名誉を棄損し、又は人格を損なう一切の行為をしないこと。
9号には「ウェブサイト等への掲載を含む」とはっきり書かれています。議場での発言だけでなく、SNSや個人サイトでの発信も対象だということです。7号の寄附も、8号の地位を利用した行為も、議場の中で起きるものではありません。
議員という立場そのものに関わる行為を扱うのが政治倫理。
——役割が違うので、入れ替えて使うことはできません。
罰は4種類。重さの順に決まっています
一 公開の議場における戒告
二 公開の議場における陳謝
三 一定期間の出席停止
四 除名
| 種類 | 内容 | 決め方 |
|---|---|---|
| 1. 戒告 | 公開の議場で、議会が決めた戒告文を 読み上げられる。「いましめる」という意味。 | 出席議員の過半数 |
| 2. 陳謝 | 公開の議場で、議会が決めた陳謝文を本人が読み上げる。文面は本人が書くのではなく議会が決めます。 | 出席議員の過半数 |
| 3. 出席停止 | 一定期間、会議にも委員会にも出られない。10日を超えることはできません(会議規則163条)。 | 出席議員の過半数 |
| 4. 除名 | 議員の身分を失います。最も重い処分。 | 3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意 |
第165条 議会が懲罰の議決をしたときは、議長は、公開の議場において宣告する。
4つに共通するのは、すべて議会の議決を経て科されるものだという点です。戒告と陳謝は文面を議会が決め、出席停止は期間を議会が決め、除名は特別多数の同意が要る。本人の意思や、当事者どうしの話し合いで決まる部分はありません。
陳謝が「謝ること」ではなく「議会が決めた文面を、公開の議場で読み上げること」だというのは、その一例です。何をどう詫びるかを決めるのは本人ではありません。4つとも、罰だからです。
どうやって始まり、どう決まるのか
そもそも存在しない:議決を経ずに、話し合いで謝罪させる手続き——条文のどこにもありません。
科されると、何が起きるか
短い条文ですが、意味は重いと思います。議会が最も重い罰を科した相手でも、有権者がもう一度選んだのなら、議会はそれを覆せない。議員の資格を最終的に決めるのは議会ではなく選挙だ、ということです。
欠席し続けた場合の規定もあります
正当な理由がなく欠席を続け、議長が招状を出してもなお出てこない場合の規定です。ここでも「議会の議決を経て」と書かれています。議長の一存では決められません。
政治倫理審査会との違い
似た場面で使われますが、目的も要件もまったく違う制度です。
| 懲罰動議 | 政治倫理審査会 | |
|---|---|---|
| 対象になる行為 | 議会の会議・委員会での行為(自治法134条1項) | 議場の外の行為も含む(条例3条。寄附・地位を利用した行為・ウェブサイトでの発信など) |
| 目的 | 罰すること | 事実があったかを確かめること |
| 根拠 | 地方自治法134〜137条 三郷市議会会議規則 第6章 | 三郷市議会議員政治倫理条例 |
| 始めるのに必要な人数 | 3人(定数の8分の1) | 6人(定数の4分の1) |
| 会派の要件 | なし | 2会派以上にまたがること |
| 期限 | 3日以内 | 行為の日から1年以内 |
| 市民が使えるか | 使えない(議員のみ) | 使える(有権者の50分の1以上) |
罰する入口のほうが、確かめる入口より広くなっています。3人あれば会派を問わず出せる懲罰動議に対し、審査請求は6人かつ2会派以上。この非対称については 政治倫理審査会のページ で詳しく書きました。
片方の手続きを省いて、もう片方の結論だけを持ってくることはできません。
たとえば陳謝は懲罰の一種ですから、懲罰の手続きを経ずに科すことはできません。
この制度を、どう見るか
懲罰は、議会が自分たちで秩序を保つために必要な仕組みだと思います。議場が成り立たなくなれば、審議そのものができません。
同時に、使い方を誤ると、少数意見を黙らせる道具にもなります。3人で発議できるということは、それだけ入口が広いということでもあります。だからこそ条文は、委員会での審査を省略させず、公開の議場で宣告させ、除名には特別多数を求めているのだと思います。
手続きを守ることが、その判断は正しかったと後から言えるための、唯一の根拠になります。