How a bill is made

議員が、
議案を出すまで。

市議会に出される議案には、市長が出すものと、議員が出すものがあります。

法律に書いてある手順は、短いです。三郷で実際に上程まで進む道は、それより長くなっています。両方を並べます。

The law

法律に書いてある要件は、
賛成者2人です。

議案を出せるのは市長だけ、と思われがちですが、そうではありません。 地方自治法112条は、議員も議案を出せると定めています。必要なのは、議員定数の12分の1以上の賛成です。

2

三郷市議会の議員定数は24人(三郷市議会の議員の定数を定める条例)。 その12分の1なので、賛成者は2人で足ります。これが法律上の要件です。

地方自治法 112条1項
議員は、議会の議決すべき事件について議案を出すことができる。ただし予算は除かれます。予算を出せるのは市長だけです。
地方自治法 112条2項
議案を出すには、議員定数の12分の1以上の賛成が要ります。三郷市議会の定数は24人なので、2人です。
地方自治法 112条3項
提出は文書で行います。
地方自治法 109条6項
委員会も議案を出せます。こちらも予算は除かれます。
地方自治法 99条
議会として、国会や関係行政庁に意見書を出すことができます。
三郷市議会会議規則 14条
議員が出すときは、案と理由を添え、112条2項によるものは所定の賛成者と連署して議長に提出します。委員会が出すときは、委員長が議長に提出します(2項)。賛成者の連署は要りません。

予算だけは、議員も委員会も出せません。 予算を編成して提出するのは市長の権限で、議会はそれを審議して議決します (二元代表制ってなに?)。

In Misato

三郷で実際に通る道は、
5つの段階があります。

賛成者を2人集めて議長に出せば、形式上は成立します。 ただ、三郷市議会でこれまで積み重ねられてきた進め方は、それとは別にあります。 成文には書かれていないので、確かめた範囲で順に書きます。

  • 01
    正副議長に相談するまず議長・副議長に、何をどう変えたいのかを説明します。ここが最初の入口になっています。
  • 02
    党会派代表者会議で説明する各会派の代表が集まる場で、案の趣旨を説明します。ここは議決の場ではありません。各会派へ一度に伝わる場として使われています。
  • 03
    各会派が持ち帰って確認する代表が自分の会派に持ち帰り、賛否を確かめます。ここで反対が残ったまま進むと、本会議で否決される可能性が出てきます。
  • 04
    議会事務局が、条文の形に整える中身が固まってから、議会事務局が市の法規担当と調整して議案の形にします。ここに時間がかかるため、上程は次の議会が目安になります。
  • 05
    委員長名で上程し、本会議で議決する会議規則14条2項により、委員会として出す場合は委員長が議長に提出します。賛同する議員が名を連ねる形をとることもあります。
Not written

党会派代表者会議は、
規則に書かれていません。

地方自治法100条12項は、議会が「議案の審査又は議会の運営に関し協議又は調整を行うための場」を置けると定めています。 ただし、その場を置くには会議規則に定めることが条件です。

三郷市議会会議規則には、この「協議等の場」の定めがありません。 条例・規則・規程を通しても、「代表者会議」という語は出てきません(2026年9月時点の例規で確認)。

法定の要件より、実際の手順のほうが重い

法律が求めているのは賛成者2人。実際に上程まで進むには、全会派の了解を得るところまでが見込まれています。 差が生まれているのは、書かれていない手順が先にあるからです。

この構造そのものについては 議会運営を考える に整理しています。 このページでは、手順がどうなっているかだけを書いています。

Why

なぜ、
この形になっているか。

条例の改正は、最終的に本会議の議決が要ります。 出したうえで否決されると、そこに残るのは「議員のあいだで話がまとまらなかった」という結果だけです。 議案の中身が良いか悪いかとは別に、それ自体が議会の運営に影響します。事前に賛否を確かめておく理由が、ここにあります。

もうひとつは、伝える経路の問題です。24人がそれぞれ個別に持ち込むと、 同じ説明が24回必要になり、誰がどこまで知っているかも揃いません。 会派の代表が集まる場に一度出せば、そこから各会派へ同じ内容が流れます。

つまり党会派代表者会議は、決定する場としてではなく、 否決を避けるための事前の調整と、情報を一度に配るための場として使われています。

What to prepare

最初に用意するのは、
条文ではありません。

説明に持っていく資料に、決まった様式はありません。 条文の案から入る必要もなく、まずは何が問題で、どう変えると何が良くなるかが伝わるものがあれば足ります。

背景いま何がどうなっているか。よりどころにしている条例や規則は何か。
現状の課題そのままだと何が起きるか。どこが足りないか。
変えた場合の見込み変えると何が良くなるか。困る人は出ないか。
他市の状況同じことを、他の議会がどう定めているか。

過去に委員会条例を改正したときは、 4つの委員会がそれぞれ何時間審議しているかを数えた資料、案を2通り並べた比較、他市の状況—— その程度の資料で検討が始まっています。

条文の形にするのは、中身が固まったあとです。 議会事務局が市の法規担当と調整して議案に整えます。ここに時間がかかるので、上程は次の議会が目安になります。

Two kinds of rules

条例と会議規則では、
重さが違います。

議会に関するルールには、条例で定めるものと、会議規則で定めるものがあります。 たとえば議会だより編集委員会は会議規則にもとづく委員会で、 これを広報委員会に組み替えるという話は、条例ではなく会議規則の話になります。

どちらも本会議の議決を経ますが、会議規則は議会の内部ルールなので、手順は条例より簡素です。 会議規則や委員会条例をどう扱うかは、自治法109条3項2号により 議会運営委員会の所管と定められています。市長部局の総務ではありません。

この所管の違いは、最初につまずきやすいところです。 総務常任委員会の所管事務調査として進めようとすると、そもそも扱う委員会が違う、という話になります。

Why so few

議員が出した議案は、
多くありません。

過去をさかのぼっても、議員提出議案の数は限られています。理由は、いくつか重なっています。

多くは、法改正への対応から始まっている

三郷市議会の個人情報の保護に関する条例(令和4年12月13日・条例第31号)は、その一例です。 もともと議会は市の枠組みの中に入っていましたが、法改正で議会が別に定める対象になりました。 定めなければルールが無い状態になるため、議会として制定しています。

ハラスメントに関する条例のように、必要が生じたところから作られるものもあります。 いずれも、何もないところから発案されたというより、必要に迫られて整えられたものです。

もうひとつは、扱える範囲の問題です。 市民の暮らしに関わるルールの多くは、法律と市の条例でカバーされています。 議会が自分で定めなければならない領域は、そもそも広くありません。

What is not decided

手順が決まっていない
ところもあります。

所管事務調査——委員会が審査の精度を上げるために、追加で確認したり現地を見たりする枠組みがあります。 契約の審査で、書面だけでは判断がつかないときなどに使われます。

ただ、実施の基準や、代表者会議に諮る必要があるかどうかについて、明文のガイドラインはありません。 実施した例が少なく、そのつど確認することになります。

書かれていないこと自体が誤りだとは思いません。 ただ、書かれていない手順は、聞いた人にしか分かりません。 選挙のたびに議員は入れ替わります。そのつど、最初から確かめ直すことになります。

手順が分かれば、
誰でも同じ道を通れます。

この整理は、自分が議案を出すために聞いたものです。 ただ、聞いた内容は自分だけが持っていても意味がありません。 次に同じことを考える人が、同じ説明を受けずに済むように、ここに置いておきます。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
違っているところがあれば教えてください。直して、直した記録を残します。