Article 100 Committee
地方自治法100条 / 議会が持つ、いちばん強い調査の権限
嘘をつけば、
刑事罰があります。
百条委員会は、関係者に出頭と証言、記録の提出を請求できる調査です。正当な理由なく拒めば6か月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。宣誓したうえで嘘をつけば3か月以上5年以下の拘禁刑。——議会が持つ権限のなかで、唯一これだけが刑事罰を伴います。
2
議案提出に必要な賛成者(定数の12分の1)
12
議決に必要な数(全員出席・議長を除く)
5
偽証の刑の上限(下限は3か月)

百条委員会とは、どういうものか。

根拠は地方自治法100条109条、そして三郷市議会委員会条例会議規則です。条文を引用しながら、何ができて、どう立ち上がるのかを整理します。特定の事案を論じるものではありません。

The Name

「百条」は、条文の番号です

正式な名前ではありません。地方自治法の100条に定められているから「百条委員会」と呼ばれています。条文にはこの言葉は一度も出てきません。

地方自治法 第100条第1項
普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(……)に関する調査を行うことができる
この場合において、当該調査を行うため特に必要があると認めるときは、選挙人その他の関係人の出頭及び証言並びに記録の提出を請求することができる。
(……)は除外規定の省略。中身は下の「できないこと」で触れます。

前半と後半で、書かれていることが違います。前半は「調査ができる」という一般的な権限。これは常任委員会でも日常的に行っています。後半が特別です——「特に必要があると認めるとき」に限って、人を呼び、話をさせ、書類を出させることができる。

つまり
百条委員会とは、この後半の権限を使うために設ける委員会のことです。
——委員会そのものは、地方自治法109条にもとづく「特別委員会」として置かれます。
What It Can Do

何ができるのか

できること 1
関係者を呼んで、証言させる
職員でも、市長でも、市民でも、市外の人でも。「選挙人その他の関係人」とあるだけで、対象は限定されていません。
できること 2
記録の提出を求める
文書・データを出させることができます。市の内部文書だけでなく、市内の団体等にも照会と記録の送付を求められます。求められた団体等は「その求めに応じなければならない」と定められています(100条10項)。
できること 3
宣誓させたうえで、聞く
民事訴訟の証人尋問の規定が準用されます(100条2項)。宣誓した人が嘘をつけば、偽証罪にあたります。
従わないと、どうなるか
出頭しない・記録を出さない・証言を拒む(正当な理由なく)
6か月以下の拘禁刑、または10万円以下の罰金(100条3項)

宣誓したうえで、嘘をつく
3か月以上5年以下の拘禁刑(100条7項)

しかも議会は、これらにあたると認めるときは「告発しなければならない」——できる、ではなく、義務です(100条9項)。

ここが、ほかの調査と決定的に違うところです。一般質問で聞いても、答えなくても罰はありません。常任委員会の調査も同じです。百条委員会だけが、刑事罰を背景に持っています。

ただし救済もあります。嘘をついた人が調査終了の議決より前に自白したときは、刑を軽くしたり免除したりできる(100条8項)。議会も、その場合は告発しないことができます(100条9項ただし書き)。

Limits

できないこと、限界もあります

制約中身
調べられる範囲「当該普通地方公共団体の事務」に限られます(100条1項)。三郷市議会が調べられるのは三郷市の事務であって、国や県の事務そのものではありません。ただし調査のために市内の団体等へ照会し、記録の送付を求めることはできます(同10項。求められた側は応じなければなりません)。
市の事務でも、外れるもの1項の括弧書きに除外が置かれています。自治事務のうち労働委員会・収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの法定受託事務のうち国の安全を害するおそれがあることなどを理由に政令で定めるもの。これらは市の事務であっても、議会の調査の対象になりません。
職務上の秘密公務員が「職務上の秘密に属する」と申し立てたときは、その官公署の承認がなければ証言・記録提出を請求できません(100条4項)。ただし承認を拒むには理由の疎明が要り、議会がそれを不十分と認めれば「公の利益を害する」旨の声明を要求できます(5項)。20日以内に声明がなければ、本人は証言・提出をしなければなりません(6項)。
逮捕・捜索はできない準用されるのは民事訴訟の証人尋問の規定で、過料・罰金・拘留・勾引に関する規定は除かれています(100条2項)。議会が直接、身柄を拘束したり家宅捜索したりはできません。
お金の枠あらかじめ、調査に必要な経費の額を定めておかなければなりません(100条11項)。その額を超えるときは、改めて議決が必要です。

とくに経費をあらかじめ決めておくという定めは、実務上おおきな意味を持ちます。設置を議決する時点で、どれくらいの規模で、どこまで調べるつもりなのかを見積もる必要があるということです。

How To Start

三郷市議会では、どう立ち上げるのか

条文をたどると、次の順序になります。三郷市議会の議員定数は24人です。

1
議会に諮る(提案の出し方は2通り)
調査を行うことと、そのための特別委員会を置くことを議会に諮ります。出し方は2つあります。
①議案として出す——議員が議案を提出するには定数の12分の1以上の賛成が要ります(自治法112条2項)。三郷市議会は定数24なので2人以上。会議規則14条により、賛成者とともに連署して議長に提出します。
②動議として出す——他に2人以上の賛成者があれば議題にできます(会議規則16条)。
いずれも会派の要件はありません。市長側から提案されるものではなく、議会が自分で始めるものです。
2
本会議で議決する(過半数)
特別委員会は「必要がある場合において議会の議決で置く」(委員会条例6条1項)。特別多数は要りません。出席議員の過半数で成立します(自治法116条1項)。議長は議員として議決に加わりません(同条2項)。定数24で全員が出席していれば、表決に加わるのは議長を除く23人、その過半数は12人です。委員の定数も、同じ議決で決めます(委員会条例6条2項)。
なお実務では、異議の有無を確認して全会一致で決することも少なくありません。
3
委員を選び、正副委員長を決める
委員の選任は議長の指名によります(委員会条例7条1項)。委員長・副委員長は委員会のなかで互選します(同8条2項)。委員の任期は、付議された事件が議会で審議されている間です(同6条3項)。
4
経費の額を定めておく
調査に入る前に、予算の定額の範囲内で、必要な経費の額を定めておかなければなりません(自治法100条11項)。超える見込みになったら、改めて議決が要ります。
5
証人の出頭・記録の提出を求める
委員会が証人の出頭や記録の提出を求めようとするときは、議長に申し出ます(会議規則104条)。委員会が直接、呼び出すのではありません。
6
調査し、報告する
審査・調査を終えたら報告書を作り、委員長から議長に提出します(会議規則110条)。会期をまたぐ場合は、閉会中の継続審査を申し出ることができます(同111条)。議会が「調査終了」を議決した時点が、偽証の自白による減免の期限にもなります。
三郷市議会委員会条例 第6条
特別委員会は、必要がある場合において議会の議決で置く。
2 特別委員の定数は、議会の議決で定める。
3 特別委員は、特別委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する。
Comparison

ほかの手続きと、何が違うのか

百条委員会政治倫理審査会懲罰動議
目的市の事務を調べる議員の倫理基準違反を確かめる議員を罰する
対象市の事務全般(職員・市長・市民・関係者)議員議員
始めるのに必要な数議案なら賛成2人以上(定数の12分の1)/動議なら賛成2人以上。設置は過半数の議決議員6人かつ2会派以上、または有権者の50分の13人で発議(定数の8分の1)
強制力出頭・証言・記録提出の請求。刑事罰ありなしなし(結果としての懲罰はある)
市民が使えるか使えない(議会が決める)使える使えない
根拠地方自治法100条・109条三郷市議会議員政治倫理条例地方自治法134〜137条

いちばん大きな違いは対象の広さです。政治倫理審査会も懲罰も、対象は議員だけ。百条委員会は市の事務そのものを調べる仕組みで、執行機関である市長や職員も対象になります。

もうひとつは入口の広さです。政治倫理審査会は6人かつ2会派以上が必要ですが、百条委員会を議会に諮るだけなら、提案者のほかに2人の賛成があれば足ります。ただし設置には過半数の議決が要るので、実際に立ち上げるには議会全体の合意が必要になります。

入口と、成立のちがい
出すのは3人でできる。でも通すには12人が要る。
——強い権限だからこそ、議会の多数が「これは調べるべきだ」と判断したときにだけ動きます。
Balance

この制度を、どう見るか

百条委員会は、二元代表制の下で議会が持っている、最も強いチェックの手段です。市長と議会がどちらも選挙で選ばれる仕組みだからこそ、議会には執行機関を調べる権限が与えられています。

同時に、強すぎるがゆえの危うさもあります。刑事罰を背景に人を呼び出す仕組みですから、使い方を誤れば、それ自体が誰かを追い詰める道具になります。設置に過半数の議決を求め、経費をあらかじめ定めさせ、職務上の秘密に手続きを設けているのは、その歯止めだと思います。

私が大事だと思っていること
この権限を使うかどうかを決めるのは、いつも議会です。
——だからこそ、使うときも、使わないときも、その理由を説明できることが要ると考えています。
わかりにくいところがあれば、教えてください
議会の手続きは、条文を読んでも意味がつかみにくいものが多くあります。「ここがわからない」と言っていただければ、条文に当たって書き足します。
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本ページは「鈴木優作調べ」です。条文の引用は原文どおりですが、解説と整理は私個人によるもので、市・議会・会派の公式見解ではありません。特定の事案について論じるものではなく、制度そのものの説明です。実際の運用は各議会の判断によります。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
出すのは3人でできる。通すには12人が要る。