Council Training · Generative AI
議員研修会で聞いた、いちばん強い言葉
反対しないことも、
貢献です。
生成AIを使える議員と、使えない議員。組織に新しい道具が入ると、人はたいていそこで分かれます。講師が「ここ一番大事なんですけど」と前置きして、二度繰り返したのがこの言葉でした。
3つの未来
進化するか、依存するか、取り残されるか
3つの役割
AIにはできない、人間の仕事
1つの言葉
使えない人にも、果たせる貢献がある

生成AIは、議会を変える。

2026年7月31日、埼玉県市議会議長会 第4区議長会の議員研修会(春日部市)に参加しました。演題は「生成AIは議会を変える 〜補完する価値、決める責任」、講師は青森大学 社会学部教授の佐藤淳(さとう あつし)氏。2時間の講演で、議会がこの先どちらに進むのかを、逃げ場のない形で突きつけられました。本ページは参加した鈴木優作が個人としてまとめた記録であり、議長会・講師・会派の公式見解ではありません。

The Line That Stayed

「反対しないことも、貢献です」

講演の終盤、議会でAIを使うときの現実的な役割分担の話になりました。得意な議員、議会事務局、苦手な議員——それぞれに役割がある、という整理のあとに出てきた言葉です。

で、ここ一番大事なんですけど、反対しないことも貢献です。反対しないことも貢献です。

AIは嘘つくぞとか、おめえらAIを使ってやってんのずるいぞとか、そんなふうなこと。だからもう議会で使わない方がいいとか、一般人でも使っちゃダメだみたいなことを言う方が出てくると、さっきのシナリオで言うと、シナリオ3に没入するんですよ。そうなると、取り残されるんですよ。

だからやることができる範囲でいいんです。得意な人と苦手な人が役割分担をしていきながら、議会全体としての意思決定の質を高めていくようなことにどんどん使っていってやりたい。

——佐藤淳氏(講演より。同じ言葉を二度繰り返して強調されました)

この言葉が刺さったのは、「使わない人」の立ち位置を、はじめて肯定的に定義したからだと思います。

新しい道具が入るとき、組織はたいてい「使える人/使えない人」で分かれます。使えない側は肩身が狭くなり、その居心地の悪さが「そんなものは信用できない」という抵抗に転じる。そうやって組織全体が止まる。私はこれを、議会に限らず何度も見てきました。

講師の整理は、そこに第三の道を置きました。使えなくてもいい。ただ、止めないでほしい。それ自体が組織への貢献だ——これは技術の話ではなく、合議体をどう運営するかの話でした。

立場求められること
得意な議員得意を活かして積極的に使う。ただし自分の一般質問のためだけに使うのではなく、議会全体でAIを使う場面(議論を支える、資料の整理、議事録など)に活かす
議会事務局もうマストですよ。ガンガン使えるようにならないと」。執行部に戻ったときにも効いてくる
苦手な議員できる範囲でOK」。若い議員にアプリの入れ方を聞いて、まず触ってみる
全員反対しないこと。それも貢献
The Starting Point

講師は「議会っていらないね」から始めた

講演の前半、講師はAIに地域課題——熊の出没問題——を投げ、農業従事者や熊など複数の立場の登場人物を設定して議論させるデモを見せました。課題のビジョンも、アクションプランも、数分で出てきます。

これ私、半年ぐらい前にこうやってて思ったんですよ。いらないね。議会っていらないね。って思ったんですよ。

——佐藤淳氏

地方議会改革を研究テーマにしている本人が、AIを触りながら議会不要論に行き着いた、という導入でした。そのうえで「では、議会に何が残るのか」を組み立てていく。逃げ道を先に塞がれた形で、2時間を聞くことになりました。

Three Futures

議会が向かう、3つの未来

生成AIは地方議会を進化させるか、消滅させるかの分岐点にある。どちらに向かうかは「あなたがどう使うか」で決まる——というのが講演の背骨でした。

シナリオ 1
AIとの共進化
質問づくりや調査の効率化にとどまらず、住民の声を深く理解し、より良い政策をつくるためにAIを積極活用していく議会。
目指すべき姿
シナリオ 2
依存と、劣化
スピードと効率ばかりを重視した結果、議員の仕事がAIが作った原稿を読むだけになり、住民の声を置き去りにする。議員も執行部も、AI同士でやり取りしている状態。
陥りやすい
シナリオ 3
孤立と、取り残し
「議会の伝統が大事だ、AIなんて信用できない」と使わずに運営を続けた結果、社会だけが変化して、議会が時代に取り残される。
陥りやすい

講師の見立てでは、多くの議会が2か3に流れます。そして冒頭の「反対しないことも貢献です」は、シナリオ3への落下を止めるための言葉でした。

What Only Humans Can Do

AI時代に、議会が果たす3つの役割

AIは「インターネット上のテキストをもとに、もっともらしい答えを生成する」仕組みです。ならば——と講師は問いました。

春日部市の市民の声って、どれくらいインターネット上にありますかね。

春日部市のいろんな課題が起きている現場の現場感みたいなものがわかる情報って、どれだけネット上に載っていますか。全世界のネット上の情報の中から見たら、ないに等しいですね。

——佐藤淳氏

この一言で、議会の役割がはっきりしました。AIが持っていないものを持っているのが、議員です。

1
市民の声を聞く
意見交換会、そして実際に現場へ行って、課題を肌でつかむ。ネット上にない情報を持ち帰る役割は、AI時代にこそ重要になる。
2
課題を設定する
聞いた声をもとに、何に取り組むのかを議員間討議で決める。優先順位をつけるのは、価値判断であって計算ではない。
3
決断し、実現にこだわる
政策提言としてまとめ、市長に提出して終わりではなく「絶対にやってくれ」と実現まで押し込む。

これってAIにできないことじゃないですか。人間じゃないとできないことじゃないですか。(中略)市民の声を聞かない、議会で討議もしない、政策提言も行わない議会であれば、いらないんですよ。いらないんです。

——佐藤淳氏

私はこれを、脅しとしてではなく基準として受け取りました。この3つをやっているかどうかは、自分で点検できます。議員の職責とは何か二元代表制のしくみとあわせて、自分の活動を照らし直す物差しになりました。

Cases

実際に、どう使われているか

講師が全国の議会で実践している事例が、具体的に紹介されました。

市民ワークショップの意見整理
「問い」が書かれたカードを使う対話ツール(サウンドカード)で意見を引き出し、出てきた意見(表計算データや録音音声)をAIで論点整理。議会だよりの原稿づくりまで一気通貫。青森市・二本松市・矢巾町などで実施。
作業時間の短縮
新庄市議会では、市民ワークショップの音声データをAIで整理し、作業時間を大幅に短縮。議員研修で模造紙に書いた内容を写真に撮り、そのままAIで要約する使い方も。
広報物の作成
弘前市・久慈市では、一般質問の告知ポスターをAIで作成。会場では、議会基本条例の条文から「春日部市議会の歌」を生成するデモも行われました。
課題のシミュレーション
熊の出没問題について、農業従事者・熊など複数の立場の登場人物を設定して議論させ、多角的な視点からビジョンとアクションプランを短時間で生成。
How To Start

導入するときの、つまずきと対策

つまずき講師の答え
コストがかかるまずは無料版から試す
難しそうできる範囲で。得意な人に聞く
情報漏えいが怖い個人情報・機密情報を入力しない
使っていいのか分からないAIに叩き台を作らせてガイドラインを策定し、それを材料に議会内で議論して決める
嘘をつくのではそのとおり嘘をつく。だからファクトチェックは人間が必ず行う(他市議会での失敗事例も紹介されました)

とくに実務的だったのが、ガイドラインの叩き台をAIに作らせるという提案です。「使っていいか」を議論しようとすると、たいてい議論の入り口で止まります。叩き台があれば、そこから直す議論に入れる。私が AIで行政をチェックするゼロトラスト行政 で考えてきたことと、地続きの発想でした。

紹介されたツール
Gemini Notebook(旧 NotebookLM)
議会での活用に最も適したツールとして紹介されました。アップロードした資料の情報だけに基づいて回答するため、ネット上の不要な情報に惑わされません。予算書や議案のPDFを読み込ませて質疑項目を作る、論点を整理する、音声解説を生成させて移動時間に「聞く読書」をする、といった使い方。岩手県滝沢市議会・静岡県牧之原市議会では、決算審査に本格導入される予定とのことでした。
Opening Remarks

開会で語られた、熊本地震への向き合い方

研修の冒頭、被災者へのお見舞いが述べられたあと、開催市の春日部市長から支援についての具体的な注意喚起がありました。①現地に行かない ②ボランティア募集を待つ ③SNSでの発信に注意する ④義援金で支援する——の4点です。

この4点は、私が 災害時の情報発信の指針 にまとめてきた内容とほぼ重なります。同じことが市長の口から語られたのは、心強いことでした。

この内容は、独立したページにまとめました
令和8年熊本地震——いま、三郷からできること
研修で語られた4点を、公式情報で裏づけてまとめ直しました。日本赤十字社の義援金受付(口座・期間・手数料)、埼玉県庁の募金箱、災害ボランティアの受付状況、義援金詐欺への注意——出典と確認日つきで並べています。令和8年熊本地震にできること →

本ページは「鈴木優作調べ」です。研修に参加した個人としての記録であり、埼玉県市議会議長会・講師・会派・三郷市議会の公式見解ではありません。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
使えなくてもいい。ただ、止めないでほしい。