8件、
すべて増額でした。
工事の代金が契約のあとで増えるたびに、「最初の見込みが甘かったのでは」という疑問が出ます。まっとうな疑問です。だからこそ、増えた理由を1件ずつ、数字で見ます。
対象は、私が議員になってから(令和7年9月定例会以降)議会で決まった、工事の変更契約です。
理由は、大きく3つに分かれます。
- 3件+1,045万4,180円インフレスライド。国の労務単価などが上がった分を、残りの工事の代金に反映
- 3件+2,024万円足場を組み、外壁を洗ってから調べると、補修する量が見込みより多かった
- 見つかった有害物 2件+1,815万5,500円石綿(アスベスト)や、基準値を超える盛土材が見つかり、その対応が加わった
このほか、令和8年9月定例会に2件(合計+660万円)が出ていて、審議中です。
1件ずつ、
理由を見る。
- 令和7年9月定例会 議案第50号9月16日 議決見つかった有害物みんなの防災プラザみさと(建築)
15億570万2,000円 → 15億1,098万7,500円+528万5,500円先に行った盛土造成の盛土材から環境基準値を超える数値が見つかり、土壌調査の費用を加えた。
- 令和7年12月定例会 議案第79号12月9日 議決早稲田小学校 外部等改修
1億5,180万円 → 1億5,587万円+407万円足場を組み、高圧水洗をした後に外壁を調べ、補修する量を確定させた。
- 令和7年12月定例会 議案第80号12月9日 議決前谷小学校 外部等改修
2億515万円 → 2億1,109万円+594万円同じく、調べた結果に合わせて補修する量を増やした。
- 令和7年12月定例会 議案第81号12月9日 議決高州東小学校 外部等改修
3億3,000万円 → 3億4,023万円+1,023万円石綿を含む下地材を撤去してから調べ、補修する量を増やした。
- 令和7年12月定例会 議案第82号12月9日 議決見つかった有害物岩野木学校給食センター 解体
1億7,512万円 → 1億8,799万円+1,287万円天井材や屋根材に石綿が含まれており、除去と特別管理産業廃棄物としての処分の費用を加えた。工期も令和8年3月17日まで延長。
- 令和8年6月定例会 議案第35号6月9日 議決みんなの防災プラザみさと(建築)
15億1,098万7,500円 → 15億1,456万6,900円+357万9,400円令和8年3月に国の公共工事設計労務単価が全国平均で4.5%上がり、工事会社から請求があった。
- 令和8年6月定例会 議案第36号6月9日 議決みんなの防災プラザみさと(機械)
4億4,359万7,000円 → 4億4,871万6,400円+511万9,400円同上。
- 令和8年6月定例会 議案第37号6月9日 議決みんなの防災プラザみさと(電気)
4億1,686万7,000円 → 4億1,862万2,380円+175万5,380円同上。
審議中の2件
- 令和8年9月定例会 議案第60号審議中施工の変更などみんなの防災プラザみさと(建築)
15億1,456万6,900円 → 15億1,687万6,900円+231万円工事の一時中止に伴う重機・鉄板の撤収、再設置など(議案参考資料の変更契約書による)。
- 令和8年9月定例会 議案第61号審議中施工の変更などみんなの防災プラザみさと(機械)
4億4,871万6,400円 → 4億5,300万6,400円+429万円給水・排水設備の施工方法の変更など(同上)。
見込みと、
実際の差。
学校の外壁は、足場を組むまで近くで見られません。市は、足場を組み、高圧の水で塗装面を洗ったあとに、工事会社が詳しく調べて補修する量を決め、市の監督員が現場で確かめていると答えています。
そのうえで、差の大きさも公開の記録に残っています。本会議での委員長報告(会議録)には、次のように記されています。
前谷小学校では、ひび割れの補修が12倍、欠けた部分の充填が7倍、モルタルの浮きの補修が3倍。早稲田小学校では、欠けた部分の充填を爆裂補修に変えて6倍。高州東小学校では、欠けた部分の充填と爆裂補修を合わせて1.5倍。
令和7年12月9日 本会議での文教経済常任委員長の報告(会議録)より要約12倍という差は、いまは会議録をたどると分かります。めざすのは、変更の議案と一緒に「当初の見込み」と「実際」が最初から並んで出てくる状態です。並んでいれば、見込みが甘かったのか、開けてみないと分からなかったのかを、誰でも見分けられます。
これから大型の改修が予定されている学校は8校あります。見込みと実際の差が毎回見えるほど、次の学校の設計の精度が上がります。
値上がり分(インフレスライド)の仕組みと、工事会社も1%を負担する計算は インフレスライド条項とは にまとめています。
補正予算では、
何が増えたのか。
工事の変更契約と、補正予算で増えた工事費は、別々に議案になります。任期中の補正予算で工事や修繕の費用が増えたのは、次のような場合です。
- 防災プラザの値上がり分本会議での委員長報告(会議録)によると、複数年度にわたって決めておく予算(継続費)の範囲内に収まっている、と説明されています。あわせて、石油製品などの価格が上がれば、今後も増額の変更契約になる可能性があるとも記されています(令和8年6月)。
- 補正予算で増えた工事・修繕道路や水路の修繕の追加(令和7年9月)、猛暑で壊れた学校の空調の緊急修繕(小学校2,378万円・中学校1,672万円、令和7年12月)、文化会館の空調配管の水漏れ(令和8年6月)などです。いずれも、壊れたものへの対応や事業の追加として説明されています。
学校3校と給食センターの増額分を、どの予算から払ったかの説明は、会議録にはありません。
民間の工事なら、
どうなるのか。
民間の工事にも、代金を見直す決まりがあります。国の審議会がつくる「民間建設工事標準請負契約約款(甲)」の第31条や、建築の業界団体がつくる「民間(七会)連合協定工事請負契約約款」の第29条には、資材価格の高騰や物価・賃金の変動で代金が合わなくなったときに、変更を求められることが書かれています。
違いは、見える場所です。民間の変更は、発注者と工事会社のあいだで決まります。市の工事は、1億5千万円以上なら議会で議決され、理由が会議録に残ります。
逆に言えば、1億5千万円未満の工事は、変更しても議会には出てきません。小さな工事の変更も、件数と金額がまとめて見える状態になれば、金額の大小にかかわらず、すべての工事の変更を同じ物差しで確かめられます。
増える前に、
気づける議会へ。
値上がりによる増額は、国の単価が上がれば、どの工事にも起きます。一方で、開けて分かった傷みや、見つかった有害物による増額は、契約の前の見込みの精度で、差を小さくできる増額です。
こんな議員がいれば、こうした増額は、議案になる前に減らしていけます。
- 契約の前に、見込みの根拠を聞く最初の契約の議案で、外壁の補修量や石綿の有無を、どこまで調べて見積もったのかを確かめる。根拠が会議録に残れば、あとの変更と見比べられます。
- 変更のたびに、差を数字で残す「当初の見込みより何倍になったのか」。前谷小学校の12倍という数字も、この問いへの答えとして会議録に残っています。毎回聞けば、差が大きくなりやすい工事の傾向が見えてきます。
- 1件ではなく、流れで見る同じ種類の工事で、どれくらいの割合で増額になっているか。これから大型改修を予定している8校に、前の学校で出た差を生かせます。
- 議会に出てこない工事にも、目を向ける1億5千万円未満の工事の変更も、件数と金額をまとめて公表するよう求める。見える範囲が広がるほど、見込みの精度は上がります。
工事は、6つの工程を順に通ります。どの工程にも専門の目があり、どの工程にも、不正や見落としが起きたときの影響があります。その工程を知る人が議会にいれば、契約の前の議案で、確かめるべき点を具体的に聞いていけます。
- 測る・境界を決める測量士、土地家屋調査士
していること公共の測量は、登録された測量士・測量士補が行います(測量法第48条)。買う土地の境界の確認や、完成した施設の登記は、土地家屋調査士の仕事です(土地家屋調査士法第3条)。
不正や見落としがあると面積が違えば、土地を買うお金が変わります。境界で食い違えば、工事が止まります。虚偽の調査や測量は禁じられ、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法第23条・第71条)。
議会で確かめられること用地と境界は、契約前に確定したか。
- 事前に調べる石綿の調査者、土壌の指定調査機関
していること建物を壊したり直したりする前には、すべての材料について石綿が使われていないかを調べます。調べるのは、国が定める知識を持つ人です(石綿障害予防規則第3条)。一定の広さ以上の土地を掘ったり盛ったりするときは、県への届出が必要で、土壌を調べるのは指定調査機関です(土壌汚染対策法第4条)。
不正や見落としがあると見落とすと、工事の途中で見つかり、増額と工期の延長になります。給食センターの石綿、防災プラザの盛土材がその例です。石綿は、働く人と近くに住む人の健康にもかかわります。
議会で確かめられること事前の調査はどこまで行い、その結果は見積もりに入っているか。
- 設計する建築士
していること学校など一定の規模の建物は、一級建築士でなければ設計や工事監理をしてはならないと定められています(建築士法第3条)。補修する量や仕様は設計図書に書かれ、これが見積もりのもとになります。
不正や見落としがあると量の見込みが実際とずれていれば、あとで変更契約になります。量を多く書く不正があれば、そのまま代金に乗ります。
議会で確かめられること当初の量を、どう見込んだか。
- 値段を決め、業者を選ぶ市の職員(積算・契約)
していること設計をもとに、市が予定価格を積算し、入札で工事会社を選びます。
不正や見落としがあると職員が予定価格などの秘密を漏らしたり、談合をそそのかしたりすれば、5年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金です(入札談合等関与行為防止法第8条)。業者どうしの談合は、刑法の公契約関係競売等妨害にあたります(第96条の6)。どちらも、高い値段で契約されて、税金が余分に出ていきます。
議会で確かめられること入札に何社が参加し、予定価格に対してどの割合で落札されたか。
- 工事を進める工事会社の主任技術者・監理技術者
していること工事会社は、現場の技術上の管理をする主任技術者を置き、下請けの額が大きい工事では監理技術者を置きます(建設業法第26条)。
不正や見落としがあると手抜きがあれば、見えない部分の欠陥が、あとの修繕費として返ってきます。
議会で確かめられること変更の理由を、現場の記録(写真や数量)で示せるか。
- 見届けて、受け取る市の監督員・検査員
していること市の職員は、契約どおりに工事が行われるよう監督し、できあがりを検査しなければなりません(地方自治法第234条の2)。変更した補修の量も、監督員が現場で確かめていると市は答えています。
不正や見落としがあると見逃せば、欠陥のある工事に代金を払うことになります。
議会で確かめられること変更した量を、誰が、どう確かめたか。
三郷市でこうした不正があったという話ではありません。それぞれの工程の重さを知るための整理です。
めざすのは、増額をなくすことではなく、防げる増額を、契約の前に減らしていく議会です。そのための道具は、質問と、数字を残すことです。