まず、これだけ
別々の選挙で、それぞれ直接選ぶしくみ。
「二元」は、代表がふたつあるという意味です。ひとつは市長。もうひとつは議会(三郷市では24人の議員)。どちらも、同じ市民が選んでいます。どちらか一方が上、ということはありません。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
憲法が、わざわざ「直接これを選挙する」と書いています。市長を市民が直接選ぶことは、法律でも変えられない前提だということです。
国とくらべると、一発でわかる
同じ「選挙で選ばれた政治」でも、国と市では代表の生まれ方がまったく違います。ここが分かれば、二元代表制はほぼ分かったと言っていいと思います。
国民が直接選べない
市民が直接選ぶ
市長を選んだのも市民。議員を選んだのも市民です。どちらも「民意」を背負っています。だから議会が市長に厳しく問うことは、市長の民意を否定することではなく、もうひとつの民意を届けることになります。
なぜ、わざわざ2つに分けるのか
効率だけを考えれば、決める人と実行する人は同じほうが速い。それでも分けているのには、理由があります。
市長と議会は、それぞれ何ができるのか
「議会って結局なにしてるの?」に答えるには、権限を並べるのが一番早いです。
| できること | 市長(執行機関) | 市議会(議事機関) |
|---|---|---|
| 予算 | つくって、議会に提案する | 認める・修正する・否決する(自治法96条1項2号) |
| 条例 | 提案する | 制定・改廃する(同1号)。議員からも提案できる |
| 決算 | 調製して、認定を求める | 認定する/しない(同3号) |
| 市役所の職員 | 指揮監督する | 指揮できない。職員に命令する立場ではない |
| 事務の調査 | 執行する | 調査できる。関係人の出頭・証言・記録の提出を求められる(同100条) |
| 相手への対抗手段 | 議決を再議に付す(176条)/議会を解散する(178条1項) | 市長の不信任を議決する(178条) |
一 条例を設け又は改廃すること。
二 予算を定めること。
三 決算を認定すること。
(四号以下、契約の締結や財産の処分など、全15号)
つまり市長は、議会が「うん」と言わなければ予算を1円も使えません。議会が予算を否決すれば、市長の公約もそのままでは実現しません。それだけ重い権限を、市民から預かっているということです。
ぶつかったら、どうなるのか
ふたつの代表が正面から対立したとき、制度は「どちらが正しいか」を決めません。もう一度、市民に聞くという答えを用意しています。
2 …前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり…たときは、…長は、…その職を失う。
3 前二項の規定による不信任の議決については、議員数の三分の二以上の者が出席し、第一項の場合においてはその四分の三以上の者の、前項の場合においてはその過半数の者の同意がなければならない。
この仕組みは、ほとんど使われません。使われないことに意味があります。「最後はこうなる」と互いに知っているから、その手前で話し合う。抜かない刀のようなものです。
市長には「もう一度考えて」と言う権利がある
議会が決めたことに市長が納得できないとき、そのまま飲むしかないわけではありません。再議——いわゆる拒否権です。
2 前項の規定による議会の議決が再議に付された議決と同じ議決であるときは、その議決は、確定する。
3 前項の規定による議決のうち条例の制定若しくは改廃又は予算に関するものについては、出席議員の三分の二以上の者の同意がなければならない。
同じ内容でも、市長が「もう一度」と言えば、通すためのハードルが上がります。市長ひとりの意思が、議会13人分より重くなる場面があるということです。ここにも、力の均衡が設計されています。
議会を通さずに決められる場面もある
専決処分といいます。災害など、議会を開く時間がないときのための仕組みです。ただし、ここには注意すべき点があります。
3 前二項の規定による処置については、…長は、次の会議においてこれを議会に報告し、その承認を求めなければならない。
4 前項の場合において、条例の制定若しくは改廃又は予算に関する処置について承認を求める議案が否決されたときは、…長は、速やかに、当該処置に関して必要と認める措置を講ずるとともに、その旨を議会に報告しなければならない。
大事なのは4項です。あとから議会が「認めない」と否決しても、すでに行われた処分そのものが自動的に取り消されるわけではありません。市長は「必要と認める措置」を講じて報告する、と書かれているだけです。
よくある、3つの誤解
三郷市に当てはめると
国・県・市・自治会・個人という役割の分かれ方については 誰が、どこまで担うのか に整理しています。議会そのものが法律で「議事機関」と定義されたのは実は最近(2023年の地方自治法改正)だという話は 地方議会が"定義"されたのは、実は最近 にまとめました。
私が、この制度をどう使うか
私は市議会議員なので、市長をチェックする側です。だから2026年の市長選挙で、どの候補も応援しません。今から誰かの応援に回れば、その人が市長になったあと、チェックが甘くなるからです。それは、私に票を託してくださった方への裏切りだと思っています。
その代わりにできるのは、皆さんが自分で判断するための材料を、平等に並べることです。二元代表制は、市民が二度選ぶ制度です。市長を選ぶときも、議員を選ぶときも、どちらも同じだけ重い一票です。
よくある質問
二元代表制とは何ですか?
住民が、首長(市長・町長・知事など)と議会の議員を、それぞれ別の選挙で直接選ぶ仕組みのことです。日本国憲法第93条第2項が「地方公共団体の長、その議会の議員…は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」と定めています。ふたつの代表がどちらも住民から直接選ばれ、対等な立場で向き合うため「二元」と呼ばれます。
二元代表制と議院内閣制は、何が違いますか?
国の議院内閣制では、国民が直接選ぶのは国会議員だけで、内閣総理大臣は国会が指名します。つまり総理大臣は国会から生まれます。一方、地方の二元代表制では、市長は議会から生まれず、市民が直接選びます。この違いから、国では与党・野党という構図ができるのに対し、地方議会には本来その区別がありません。
地方議会に与党・野党はありますか?
制度上はありません。市長は議会の多数派から選ばれるわけではないため、議会が市長を支える義務も、支えないことを理由に責められる立場もありません。議員は会派を組むことがありますが、それは国会の与野党とは意味が異なります。議会が市長の応援団になってしまうと、市民が市政を確かめる手段が失われます。
市議会は、市長を辞めさせることができますか?
できます。地方自治法第178条の不信任議決です。ただし要件は重く、議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意が必要です(三郷市の議員数24人・欠員なしなら、16人以上の出席と、全員出席時で18人の同意)。不信任が議決されると、市長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できます。解散しなければその日に失職し、解散して行われた選挙後の議会で再び不信任が議決された場合も失職します(このときは出席者の過半数で足ります)。
市長は、議会が決めたことを拒否できますか?
「再議」という制度があります(地方自治法第176条)。議会の議決に異議があるとき、市長は10日以内に理由を示して、もう一度審議するよう求めることができます。再議に付された条例・予算を可決するには、出席議員の3分の2以上の同意が必要になります。通常は過半数(24人出席なら13人)で可決できるものが、再議後は16人必要になる計算です。
議会を通さずに市長が決められることはありますか?
専決処分があります(地方自治法第179条)。議会が成立しないとき、緊急で議会を招集する時間的余裕がないことが明らかなとき、また議会が議決すべき事件を議決しないときに、市長が処分できます。市長は次の会議で議会に報告して承認を求めなければなりませんが、条例・予算について承認を求める議案が否決されても、必要と認める措置を講じて報告することが定められているだけで、処分そのものが自動的に取り消されるわけではありません。