Persona-based Policy Deliberation
政策を決めるとき、誰の顔を思い浮かべているか
賛成か、反対か。
その前に、数える。
議会の議論は、たいてい賛成と反対に分かれるところから始まります。でもその前に、「この政策は、誰に、何人、どう関係するのか」を数えられるはずです。数えてみると、賛否の構図そのものが変わることがあります。
2,360
統計から組み立てた架空の市民
34項目
一人ひとりが持つ属性
5
議論で見えるようになったこと

ペルソナで、政策議論は
どう変わるか。

三郷市の統計をもとに、2,360人分の「架空の市民」を組み立てました。町丁目ごとの年齢構成、世帯のかたち、住まい、学区、障害のある方の割合まで、取れる範囲は実データに合わせています。これを使って何ができて、何ができないのか——この道具の危うさも含めて書きます。

What Comes Next

増やせた時代が、まもなく終わります

三郷市はずっと、人が増えてきたまちです。だから多くのことを「足す」ことで応えてこられました。その前提が、これから変わります。

三郷市版人口ビジョン・総合戦略(市の公式推計)
目標とする人口推移では、人口がピークを迎えるのは令和12(2030)年
現状に準拠する人口推移では、ピークは令和7(2025)年——すでに過ぎています。

対策がうまくいってもあと数年。何もしなければすでに折り返している。これは私の見立てではなく、市が自分で立てた推計です。

これから起きること 1
「足す」で応えられなくなる
人が増えるあいだは、新しい要望に新しい事業で応えられました。人口が減れば、税収も減ります。足し算だけでは追いつかなくなる。
これから起きること 2
「選ぶ」議論が始まる
何を残し、何を縮め、何をやめるのか。誰かにとって不利な決定を、必ずどこかでしなければならなくなります。それが避けられない時代に入ります。
これから起きること 3
そのとき、誰の声で決めるのか
選ぶ議論では、声を届けられる人が有利になります。届けられない人は、反対する機会すらないまま外されます。しかも——外したことに、こちらが気づけません。

これまでのやり方が間違っていたという話ではありません。増えている時代には、それで足りていたのだと思います。ただ、減っていく時代に同じやり方を続けると、静かな人から順に消えていきます。

だから、いまのうちにやっておきたいこと
選ばなければならなくなる前に、
そこに誰がいるのかを、数えておく。
What Becomes Visible

ペルソナを置くと、5つのことが見えます

2,360人にテーマを当てて「誰が関係するか」を数えると、議論の前提が変わります。

1
規模がわかる
その政策に直接関係する人が何人いるのか。全体の何%なのか。「少数だから後回し」ではなく、少数だと分かったうえでどうするかを議論できます。
2
地域の偏りが見える
その課題がどの地区に集中しているか。偏っていると分かれば、議論が地域対立になる前に、語り方を変えられます。
3
沈黙している層が数えられる
関係するのに市政に関心がない・接点がない人が何人いるか。この層は要望を出しません。だから議論に現れません。数だけは知っておける
4
複合的な立場を扱える
「高齢者」「子育て世帯」と分けると見落とすものがあります。障害があり、子育て中で、親の介護もあり、世帯年収300万円未満——そういう人が実際にいます。
5
議論の外にいる人が数えられる
設定したどの立場にも当てはまらない人。その議論が、そもそも誰を視野に入れていないかが見えます。ここがいちばん効きます。
会派を超えて共有できる
これは意見ではなく集計です。立場が違っても、同じ数字を出発点にできる。合意の土台をつくる材料になります。
A Real Run

やってみた:路線バスをどうするか

令和8年度予算の路線バス運行委託は6,796万円。このテーマで2,360人を集計しました。

立場人数割合
今すぐ困っている(バス・送迎に頼っている)110名4.7%
いずれ困る(車がないと不便な地域の50歳以上)110名4.7%
子どもの送迎で困っている110名4.7%
今は困っていない(駅徒歩圏)952名40.3%
この議論の外にいる805名34.1%

まず「いま困っているのは4.7%」という事実が出ます。これは冷たい数字に見えますが、そうではありません。4.7%だと分かったうえで、それでもやるかどうかを議論する——それが政治の仕事だからです。分からないまま「多くの市民が困っています」と言うより、はるかに誠実だと思っています。

そして、3つの見落としが出ました

見落とし 1
「いずれ困る」層の87%が北部に集中
このまま議論すると「北部への予算配分」という地域対立になり、他地区の理解を得にくくなります。語り方を変える必要があると分かりました。「北部の問題」ではなく「免許を返したあと、誰にでも起きること」として。
見落とし 2
子育て層の半分に、声が届いていない
5つの立場で最も声が届きにくい層でした。しかも要望は「バスを増やす」ではなく「駐輪場と送迎スペース」。バスの議論だけしていると、この課題を取りこぼします。
見落とし 3
議論の外に805名、うち0-14歳が139名
いちばん長くこの街に住む世代が、この議論の枠外にいました。立場の設定自体が、彼らを視野に入れていなかったということです。

この3つは、従来のやり方では出てこなかったと思います。とくに「見落とし2」——困っている人に聞きに行く前に、その人たちが何を求めているかを取り違えていた可能性に気づけたことは大きい。

なお、この2,360人は統計から組み立てた想定であって、実在の市民が答えたものではありません。ここで出るのは答えではなく、問いです。「本当にそうなのか」は、実際に聞いて確かめます。

討議の全文を公開しています
立場ごとの発言、対立軸、議員としてのアクション5項目まで。実際にどう使っているかが分かります。
サンプル数と調査の読み方も見る →
Possibilities

これから、どう使えるか

場面できること
一般質問の設計誰のために聞くのかを先に決められる。「〇〇が課題です」ではなく「この課題は〇〇名に関係し、そのうち〇%に情報が届いていません」と問える
政策の影響評価ある施策で誰が得をし、誰が影響を受けるか。使用料の値上げなら、世帯年収300万円未満の23.6%にどう効くか
合意形成の設計対立軸を先に把握する。どこで割れるかが分かれば、割れない部分から合意を積める
広報の設計誰に届いていないかが分かる。紙の広報・回覧板・人づてでしか情報を得ていない層が31%いるなら、デジタル化だけでは足りない
対話会の設計誰に聞きに行くべきか。待っていても来ない層を先に特定して、こちらから出向く
議会内の議論意見ではなく集計なので、会派を超えて同じ土台に立てる

どれも議論の入口を広げる使い方です。「何を確かめるべきか」「誰に聞くべきか」がはっきりすれば、そのあとの対話が濃くなります。決めるのは、実際の声を聞いたあと。その手前を厚くするための道具です。

Before Asking

聞きに行くための、準備です

この仕組みでできるのは、本物の声を、より正確に聞きに行くこと。聞く前に「誰に、何を聞くべきか」を絞り込むための準備です。

1
問いを絞る
どの立場が抜けているか、誰に声が届いていないか。聞くべきことを間違えないための準備です。
2
聞きに行く
対話会、アンケート、現場での聞き取り。声が届きにくい層には、こちらから出向きます。
3
実際の声を、上に置く
想定と実際がずれたら、実際のほうが正しい。そのたびに前提を作り直します。この繰り返しで精度が上がります。
4
出どころを、はっきりさせる
「これは統計から組み立てた想定です」「これは回答者〇人の声です」と分けて示す。区別があるから、どちらも使えます。

市長選のページで「私に届く声には偏りがあります」と書きました。私に声が届くのは、私に会える人・LINEを使う人・市政に関心がある人です。その外側に何人いるのかを知りたくて、この仕組みを作りました。

「自分は想定に入っていない」と思われた方へ
それがいちばん聞きたい声です。この仕組みが取りこぼしているものが、そこにあります。どんな短い一言でも構いません。
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本ページは「鈴木優作調べ」です。個人で作成した検討材料と、その使い方についてまとめたもので、市・議会・会派の公式見解ではありません。登場する2,360名はすべて架空の人物であり、実在の市民の意見ではありません。

Sources & Notes

作成:鈴木優作(三郷市議会議員/創政MISATO)
数えるのは、切り捨てるためではない。