全体の流れ
請求が出てから、議会が措置を決めるまで。条例が定める順番はこうなっています。
誰が、請求できるのか
市民も議員も請求できます。ただし、どちらも一人ではできません。
50分の1以上の連署
かつ 2会派以上
定数24で「6人以上・2会派以上」は、何を意味するか
まず、よくある誤解を先に解いておきます。請求するのは会派ではなく、議員個人です。条文が求めているのは「6人以上の議員が連署すること」と「その6人が2つ以上の会派にまたがっていること」の2つだけで、会派まるごとの賛同は要りません。6人以上の会派が2つ必要、という意味でもありません。
たとえば最大会派の5人+別会派の1人でも、4人会派の3人+別の4人会派の3人でも成立します。そのうえで、実際の会派構成に当てはめると何が起きるかを見ます。
| 会派 | 人数 | この会派の議員だけで足りるか |
|---|---|---|
| 新政会 | 7人 | 人数は足りるが1会派なので不可 |
| 21世紀クラブ | 4人 | 人数が足りない |
| 創政MISATO | 4人 | 人数が足りない(私の会派です) |
| 公明党 | 4人 | 人数が足りない |
| 日本共産党 | 3人 | 人数が足りない |
| 無所属 | 2人 | そもそも会派ではありません |
どの会派も、その会派の議員だけでは請求できません。最大会派は人数を満たしますが、1会派だけでは会派要件で止まる。残る5つは、そもそも6人に届きません。——つまりこの議会では、必ず会派をまたいで人を集めなければ、審査請求は成立しません。
ハードルは人数ではなく、そこにあります。自分の会派の外に出て、他会派の議員に署名を求める。会派の意向と違う行動を取る議員が、少なくとも1人は要る。それを、まだ事実が確かめられてもいない段階でやることになります。
加えて、条文は「2つ以上の異なる会派に属するもので構成されていなければならない」と定めています。そのため無所属の議員を構成員に数えられるのかは、条文からは読み取れません。会派に属していない議員が、この入口をどう使えるのかが書かれていない、ということです。
3人の会派なら他会派から3人以上、2人の無所属なら4人以上。少数であるほど、入口は遠くなります。
一方、その議員を罰するための懲罰動議は、3人で発議できます(自治法135条2項・会派要件なし)。確かめる入口のほうが、罰する入口より狭い——これが現在の状態です。
歯止めとしての意図は理解できます。数の力で誰かを追い落とす道具にしないためでしょう。ただ、その歯止めが効きすぎると、確かめること自体ができなくなります。そして確かめられないまま、より軽い手続きのほうが使われる。私は、入口の要件は見直す余地があると考えています。
つまり1年という時効があります。また、辞職などで議員でなくなった人は、もう対象になりません。なお条例の附則で、第4条は施行日(令和7年4月1日)以後に行われた行為にだけ適用されると定められています。
審査会は、どう構成され、どう決めるのか
| 項目 | 条例の定め |
|---|---|
| 委員の数 | 8人以上。議員のうちから議長が公正を期して選任する(5条3項) |
| 任期 | 当該審査が終了し、結果を議長に報告した日まで(5条4項)=案件ごとに設置される |
| 会長・副会長 | 委員の互選で定める(5条5項) |
| 開くための人数 | 委員の過半数の出席(6条3項) |
| 決め方 | 会長を除く出席委員の過半数。可否同数のときは会長が決する(6条4項) |
| 公開・非公開 | 公開が原則。ただし会長が審査会に諮って非公開にできる(6条5項) |
| 秘密の保持 | 委員は職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。退任後も同様(5条8項) |
| 議長が対象のとき | 副議長が、両方が対象なら議会運営委員長、年長議員の順で議長の職務を代行(規程12条) |
注目したいのは「会長を除く出席委員の過半数」という決め方です。会長は議事を主宰し、可否同数のときにだけ決定権を持ちます。委員会条例の一般的な議決方法と同じ考え方で、主宰者が最初から一票を投じない設計になっています。
対象となった議員の、権利と義務
この条例は、疑われた側を一方的に裁く仕組みにはなっていません。意見を述べさせる、反論を残す、晴れたら名誉を回復する——その3つが条文に書き込まれています。
勧告は、7種類ある
審査会が「必要と認める措置」として勧告できる内容は、施行規程で7つに限定されています。重い順ではなく、規程に書かれている順に並べます。
7番目に「名誉の回復」が入っているのが、この規程の要点だと思います。審査会は罰を与えるための機関ではなく、事実を確かめる機関である——という位置づけがここに表れています。
議場で謝罪を求めることの、重さ
勧告の2番目に「本会議における陳謝勧告」があります。ただ、これは軽く扱ってよい手段ではないと考えています。理由は4つです。
一 公開の議場における戒告 二 公開の議場における陳謝 三 一定期間の出席停止 四 除名
2 懲罰の動議を議題とするに当つては、議員の定数の八分の一以上の者の発議によらなければならない。
| 手続き | 始めるのに必要な人数 | 三郷市(定数24) |
|---|---|---|
| 懲罰の動議 (罰する) | 定数の8分の1以上の発議(自治法135条2項) | 3人・会派要件なし |
| 政治倫理の審査請求 (確かめる) | 定数の4分の1以上かつ2会派以上(条例4条1項2号) | 6人以上 |
問題は、この手段をどういう順序で、どれだけ慎重に使うかです。事実の確認を尽くし、本人に十分な反論の機会を与えたうえでなければ、手を伸ばすべきではないと考えています。
審査会を開かずに、謝罪で済ませることはできるのか
「審査会を開く代わりに、議場で謝ってもらう」——実務ではこうした落としどころが語られることがあります。制度としてどうなのかを、条文で確かめます。
そして懲罰は、議会が議決して科すものです。
議決を経ていない謝罪は、法律上の懲罰ではありません。条文の外側にある行為です。それでも外から見える光景は懲罰とほぼ同じで、記録には謝罪した事実だけが残ります。
条文に「開かない」という選択肢はありません。すでに審査請求が出ている状態で「開かない代わりに」という取引が成立するなら、それは条文に根拠のない扱いです。請求前の段階なら条例上の義務はまだ生じませんが、次の3つが失われる点は変わりません。
早く終わることと、正しく終わることは違います。そして一度その形で処理されると、それが次の基準になります。条文に書かれていない扱いほど、前例の力が強くなるからです。
書類の不備を理由に、実施しないことはできるのか
まず補正を命じなければならないと定められています。
二重に塞がれています。① 議長の段階——条例5条1項は「設置し…付託するものとする」。議長に書類の中身を審査する権限はなく、門前払いする道が条文にありません。確認するのは審査会です(規程4条1項・2項)。
ここも「命ずることができる」ではなく「命ずるものとする」。直す機会を与えることが義務です。却下できるのは、次の2つの場合だけです。
| 却下できる場合 | 基準は明確か |
|---|---|
| 補正命令に従わないとき | 明確。命令に応じたかどうかで判断できる(規程5条1項後段) |
| 結果が不適当と認められたとき | 基準が条文にない。何をもって「不適当」とするかが書かれていない(同前段) |
疑いをかけられた側にとっては、終わったことが分かる形で残るかどうかが重要です。却下も含めて結末は公表されるべきだと考えています。
では、取り下げるには
条例と施行規程を最初から最後まで読みましたが、取り下げる手続きは、どこにも定められていません。
「取下げ」「撤回」という語は一度も出てきません。
定められている「終わり方」は2つだけです。①審査を終えて議長に報告する(条例8条1項)。②審査会が却下する(規程5条1項)。②は審査会が判断することで、請求した側が選べる出口ではありません。
参考までに、会議規則には撤回の定めがあります。ただしいずれも審査請求を直接の対象とはしていません。
| 何を撤回するか | 誰の承認が要るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 会議の議題となった事件・動議 | 議会の承認 | 会議規則19条 |
| 委員会の議題となった動議 | 委員会の承認 | 会議規則100条 |
| 請願書(議題となったものを除く) | 議長の承認 | 会議規則139条5項 |
審査請求は「事件」でも「動議」でも「請願」でもありません。条例13条・規程13条の委任により議長が定める領域ですが、その判断の根拠が条文に用意されていない——これが現在の状態です。放っておくと、次の3つが起こりえます。
私は、取り下げを認めるべきか否か以前に、どちらなのかを条文に書いておくべきだと考えています。認めるなら「誰の承認が必要か」「どの段階まで可能か」「公表はどうするか」を。認めないなら、その旨を。書いていないことが、いちばん危ういからです。
記録は、どう残る設計になっているか
ここまで「開かない」「却下する」「取り下げる」を見てきました。では、手続きが動いたかどうかは、あとから確かめられるのか。施行規程は、この点をかなりはっきり定めています。
手続きの各段階に、文書が用意されています。
| 段階 | 作られる文書 | 根拠 |
|---|---|---|
| 審査請求 | 審査請求書(様式第1号)/審査請求署名簿(第2号) | 規程2条1項・2項 |
| 対象議員への通知 | 審査請求通知書(第3号) | 規程2条4項 |
| 付託の通知 | 審査付託通知書(第4号) | 規程3条 |
| 署名の確認 | 審査請求署名簿確認依頼書(第5号)※選挙管理委員会あて | 規程4条2項 |
| 却下 | 審査請求却下通知書(第6号=審査会→議長/第7号=議長→当事者) | 規程5条2項・3項 |
| 審査結果 | 審査結果報告書(第8号)/審査結果通知書(第9号・第10号) | 規程6条・7条 |
| 措置 | 措置内容決定通知書(第11号) | 規程8条 |
| 反論 | 意見書(第12号) | 規程9条 |
請求されれば請求書が残る。対象議員に伝えれば通知書が残る。付託すれば付託通知書が残る。却下しても却下通知書が残る。手続きが動けば、必ず文書が生まれる。——そういう作りになっています。
これは誰かを疑うための話ではありません。後から誰でも確かめられる状態になっている、という設計の話です。議会の文書は情報公開制度の対象でもあります。だからこそ、手続きは記憶や口約束ではなく、文書で確認するものだと考えています。
これらは、すべて公文書です
(1) 市長 (2) 教育委員会 (3) 選挙管理委員会 (4) 公平委員会 (5) 監査委員 (6) 農業委員会 (7) 固定資産評価審査委員会 (8) 議会
2 この条例において「市政情報」とは、実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録…であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう。
議会は、条例が定める実施機関のひとつです(2条1項8号)。したがって、議会が職務上つくり、または受け取った文書は「市政情報」にあたり、市民の公開請求の対象になります。審査請求書も、通知書も、却下通知書も——誰かの私物ではなく、公文書です。
これは実務的にも意味があります。「文書があるのかないのか」は、請求すれば確かめられるということだからです。記憶や口約束を突き合わせる必要はありません。議会の手続きは、市民があとから検証できる状態に置かれている——それがこの条例の建て付けです。
説明と、手続きが食い違ったとき
議長は議会を代表する立場です(自治法104条)。代表者会議や議会運営委員会で議長が述べた説明は、各会派に持ち帰られ、議員が物事を判断するときの前提になります。「そう進むのだろう」と各議員が受け止め、それに沿って動く。議会運営は、その積み重ねで回っています。
だからもし、説明されたことと実際の手続きが食い違っていた場合、それは単なる行き違いでは済みません。議会全体が、事実と異なる前提で動いたことになるからです。そして文書が残る設計である以上、食い違いは後から必ず明らかになります。
私は後者だと考えています。議会を代表して述べた説明が事実と違ってよいのなら、議員は何を前提に判断すればいいのか——その問いが残るからです。議長を信用できないなら、議会は毎回すべてを疑ってかからなければ動けません。議長の説明が正確であることは、議会が議会として機能するための前提です。
これは、職責を守るための論点です。議長という職責を、どこまで重いものとして扱うかという話です。重く扱うほど、その職に就く人は守られます。「言ったとおりにやる」が当たり前になっていれば、あとから疑われること自体がなくなるからです。
議長の職責と、すべての議員が平等に扱われること
ここまでの論点は、突きつめると議長という職責をどう捉えるかに行き着きます。そしてこれは、すべての議員が、同じ扱いを受けられるかどうかという話だと思っています。
職務はこの4つ。「判断する」「選別する」は含まれていません。議長は議事を整理する役であって、中身の当否を決める役ではない。しかも規程12条は議長自身が審査対象になったときの代行順序まで定めています。議長は、この制度の外側にいる人ではないという前提です。
条文どおりに動く領域では、経験年数も、会派の大小も関係がありません。誰が対象であっても、同じ要件で始まり、同じ手続きが進み、同じ期限で公表される。ルールとは本来、そのためにあるものだと思っています。
多様な意見の反映、透明性、公平・公正・民主的な運営。これは私の願望ではなく、議会が自分で条文にしたことです。私がやりたいのは、ここに書いてあるとおりにするということです。
議会は多数決で決めます。ただ多数決は、少数派を黙らせる道具ではありません。手続きが守られているからこそ、負けた側も結果を受け入れられる。手続きを飛ばして出た結論は、勝った側にとっても揺らぎやすい結論になります。だから自分に不利な場面でも同じことを言うつもりです——書いてあるとおりに動かすことが、いちばん地味で確実な民主主義の守り方だと考えています。