3つの問いと、
短い答え。
市役所の仕事では、写真や動画、会議の録音、紙をスキャンしたデータが日々生まれます。そこには、名前や顔や声が入ります。それを、どこに置いてよいのか。よく出る3つの問いから始めます。
- 市の情報を、外部のサービスに上げてよいのか一律に禁じる法律はありません。市には安全管理の義務があり、その義務は委託した先にも、その先の再委託にも及びます。置いてよいかは、情報の重さと、契約と手続きで決まります。
- 職員が個人の端末で撮るのはどうか撮ることを禁じる法律はありません。問題になるのは撮ったあとです。国のガイドラインは、重い情報について、支給された端末以外での作業を禁じる考え方を示しています。
- やりとりの記録は、消せるのか手元の写しは消せます。市のログと、公文書としての記録は別です。ログは1年以上の保存が望ましいとされ、改ざんされないよう守ることも求められています。
法律は、
何を求めているか。
個人情報の保護に関する法律の、市に関わる部分です。
- 第66条安全管理措置市は、保有する個人情報の漏えい・滅失・毀損を防ぐため、必要かつ適切な措置を講じなければなりません。この義務は、委託を受けた事業者にも、二段階以上の再委託を受けた者にも準用されます。
- 第67条従事者の義務個人情報を扱う職員、委託先の従事者、派遣で働く人は、業務で知り得た個人情報をみだりに他人に知らせたり、不当な目的に使ってはなりません。退職や契約の終了のあとも続きます。
- 第69条利用・提供の制限法令に基づく場合を除き、利用目的の外で使ったり、外に出したりできません。本人の同意があるときなどの例外はありますが、本人や第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあるときは、例外に乗れません。
- 第68条漏えいのときの報告要配慮個人情報が含まれる、不正の目的による、対象が100人を超えるなどの場合、個人情報保護委員会への報告と本人への通知が必要です。速報は事態を知ってから速やかに、確報は30日以内(不正目的によるものは60日以内)です。
罰則もあります。職員だけでなく、委託先や再委託先で働く人、派遣で働く人も対象です。
- 第176条2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金個人の秘密が記録された個人情報ファイルを、正当な理由なく提供したとき
- 第180条1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金業務で知り得た保有個人情報を、自分や他人の不正な利益を図る目的で提供し、または盗用したとき
- 第181条1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金職権を濫用して、職務以外の目的で個人の秘密が記録された文書や電磁的記録を集めたとき
罰則の重さは、2028年7月16日に施行される改正で引き上げられます。上の数字は、いまの条文のものです。
議会は、
どうなのか。
ここまでは、市長部局など「市の機関」の話です。議会は、同じ法律の同じ章では動いていません。分かりにくいところなので、分けて書きます。
- 議会には、独自の条例個人情報保護法の第5章(安全管理措置や利用の制限などを定める章)は、地方公共団体の機関のうち議会には適用されません。三郷市議会は、三郷市議会の個人情報の保護に関する条例(令和4年条例第31号)と施行規程を、自ら定めています。
- 市から議会へ渡すとき市長部局が保有する個人情報を議会へ提供する場面では、議会も「地方公共団体の機関」として扱われます(第69条第2項第3号)。渡す側には、必要な限度であることと、相当の理由があることが求められます。
- 議員と、議会事務局の職員は違う議会事務局の職員は一般職なので、地方公務員法第34条の守秘義務がかかります。一方、議員は特別職で、同法の規定は原則として適用されません(第4条第2項)。議員を縛るのは、会議規則、政治倫理条例、地方自治法にもとづく懲罰などの別の枠組みです。
- 通報の道も、別公益通報者保護法がいう「行政機関」からも、議会は除かれています(第2条第4項第2号)。市の職員が使う公益通報の窓口とは別の道になります。
つまり、市の情報の扱いと議会の情報の扱いは、根拠が別です。議会の側でどう受け止めるかは、議会自身が決めることになります。
情報の重さで、
置ける場所が変わる。
総務省のガイドラインは、情報を漏れたときの影響で区分し、区分ごとに置ける場所を整理しています。「外部サービスは一律にだめ」でも「何でもよい」でもありません。
| 区分 | どんな情報か | インターネット上のサービスで扱えるか |
|---|---|---|
| 自治体機密性3A | 国のガイドラインでいう秘密文書に相当するもの(極秘文書・秘文書) | 極秘文書は、インターネットにつながっていない機器や媒体に保存することが求められます。 |
| 自治体機密性3B | 漏れたときに個人の権利利益を大きく損なうもの(住民記録、税務、国保、生活保護などの個人情報ファイル) | ISMAP(政府が求める基準を満たすと登録されたサービス)なら利用できます。アクセス制御と暗号化が必要です。 |
| 自治体機密性3C | 3Bほどではないが、公表を前提としないもの(職員の属性に基づく個人情報、入札の予定価格など) | 同じくISMAP登録のサービスなら利用できます。 |
| 自治体機密性2 | 直ちに公表することを前提としないもの(政策の検討に関する情報など) | 利用できます。アクセス制御と暗号化が必要です。 |
| 自治体機密性1 | それ以外 | 利用できます。 |
総務省「地方公共団体における情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」(令和8年3月27日改定)より。ISMAPは、政府が求めるセキュリティの基準を満たすと認められたクラウドサービスを登録しておく制度です。
あわせて、使う前に決めておくことも示されています。使える業務の範囲、事業者の選び方、利用を許可する人と手続き、情報が保存される国と地域、終わったときの消し方。機密性の高い情報は、国内のデータセンターに保存されることを確かめる必要がある、とも書かれています。
9月の一般質問で、企画政策部長は、個人情報を含む文字起こしやAI-OCRを LGWAN の上のサービスで行っていると答えました。インターネット側に出さない置き場所を選ぶ、という答えです。
個人の端末で
撮ったとき。
撮ること自体を禁じる法律はありません。庁舎の中の撮影は施設を管理する側のきまりで制限でき、議場や委員会室は議会の管理です。そして、映っている人の肖像やプライバシーは、市のきまりとは別に守られます。
重いのは、そのあとです。仕事で撮った映像に個人情報が入っていれば、それは市が持つべき記録です。個人の端末に置いたままだと、市の管理が届きません。国のガイドラインは、機密性の高い情報について支給された端末以外での作業を禁じる考え方を示し、外部への持ち出しには情報セキュリティ管理者の許可を求めています。
- 市の管理下に移す上司に報告し、市の端末や記録として残す。誰が持っている記録なのかを、はっきりさせます。
- 個人の端末からは消すクラウドへの自動保存、同期先、ゴミ箱まで含めて消します。
- 誰にも転送しない外部サービスやSNSに上げれば、市の管理は届きません。
- 不正の記録なら、正規の窓口へ人事や監察の部門、公益通報の窓口、必要なら警察。個人のクラウドに置くことは、証拠としての価値をむしろ下げます。
記録は、
どこまで残るか。
「消せますか」という問いへの答えは、どの記録を指すかで変わります。
- 手元の端末やメールソフト職員が消せます。消えるのは、手元の写しです。
- 市のログ(サーバー、認証、通信の記録)国のガイドラインは、アクセスログ・システム稼動ログ・障害時のログなどを取得し、1年以上保存することが望ましいとしています。改ざんや消失が起きないよう守ること、定期的に点検・分析する仕組みを設けることも求めています。
- LGWANなど、市の外側に残る記録市の一存では消せません。運営する側の運用に従います。
公文書としての扱いは、また別の話です。三郷市文書取扱規程は、職員が職務で作り、または受け取った電磁的記録で、組織として使っているものを「文書」と定めています。三郷市情報公開条例も、電磁的記録を「市政情報」に含めています。つまり、メールや動画も、中身によっては公開請求の対象になり得ます。
三郷市への公開請求ができるのは、市内に住む人、市内に事務所や事業所を持つ人や法人、市内に勤める人、市内の学校に通う人、市の事務事業に利害関係がある人です。「どなたでも」ではありません。
不正を記録したい、
と思ったとき。
記録を残すこと自体は、間違いではありません。問題になるのは、置き場所と渡し方です。
三郷市には、職員等の公益通報の窓口が規程で置かれています。窓口は総務部人事課で、通報を受け付ける委員会は副市長を委員長として構成されます。規程は、通報した人が不利益な取扱いを受けないことと、秘密が守られることを定めています。市の職員だけでなく、派遣で働く人や、請負などで市の業務に従事する人も対象です。
公益通報者保護法は、2026年12月1日に改正法が施行されます。通報を理由とする解雇や懲戒は無効とされ、通報から1年以内のものは通報を理由としたものと推定されます。通報した人を特定しようとする行為も禁じられます。
外から読める形に
できること。
ここまでの判断の基準は、市の中のきまりに書かれています。公開されている資料でたどれるのは、次の手前までです。この3つが読める形になれば、市民も職員も、同じ物差しで確かめられます。
- 情報セキュリティポリシー市は「総務省のガイドラインに準拠し、対策基準に定めている」と答えています。例規集で読めるのは、基本方針を定める本部を置く規程と、担当する係の事務分掌です。対策基準そのものが公開されれば、外部サービスを使える条件を誰でも確かめられます。
- 電子データの保存と廃棄文書取扱規程は、電磁的記録を「文書」に含め、意思決定の経緯を記録に残すことも定めています。一方、保存と廃棄を定める章は、電子文書を対象から外し、必要な事項は総務部長が別に定めるとしています。その定めが公表されれば、電子メールや動画をいつまで残すのかが、はっきりします。
- 外部委託の中身個人情報の外部委託は、記録票を登録簿に綴り、閲覧できるようにする仕組みがあります。委託先に求める安全管理の中身まで示されれば、委託の良し悪しを比べられます。
議会で、
何を求めたか。
令和8年9月定例会で、外部サービスの活用を広げるための環境整備を問い、次の4つを職員の手元にそろえることを求めました。
- 使えるサービスどれを使ってよいのかが、名前で分かる状態に。
- 入力してよい情報の範囲情報の重さと、置ける場所の対応が分かる状態に。
- 申請と承認の手順使いたいときに、誰にどう出すのかが分かる状態に。
- 相談先迷ったときに聞ける場所が、はっきりしている状態に。
禁止するためのルールではなく、使うためのルールです。ルールが手元にあれば、迷う場面は減り、事故も減ります。